寄席演芸家似顔絵展、そしてけんこう一番!
深川東京モダン館で開催されている「寄席演芸家似顔絵展4」に行きました。ちばけいすけさんと佐々木知子さん、どちらも似顔絵師というご夫婦の二人会形式の展覧会である。
夫のちばけいすけさんはナンプレ誌「ナンプレ館GOLD」にナンプレ問題とイラストを掲載しているナンプレ作家としての顔も持っている方で、作字愛好家でもある。妻の佐々木知子さんは演芸情報誌「東京かわら版」で2014年から似顔絵エッセイを連載しているので、お馴染みの方も多いのでは。
経歴については2020年に「寄席演芸家似顔絵展3」が開催されたときに、お二人を取材し、ブログに詳しく書いたので、こちらの方をお読みください。https://engei-yanbe.com/archives/2564
この展覧会では、佐々木さんの方は「東京かわら版」に過去3年間に掲載した似顔絵を厳選して17点、ちばさんの方はこの展覧会のために描き下ろした作品を17点、展示している。
ちなみに今回展示している佐々木作品は順不同に、母心、春風亭柳橋、玉川太福&伊丹明、三遊亭朝橘、春風亭昇也、きょうこ、ねづっち、丸一小助・小時、三遊亭歌る多、カントリーズ、古今亭菊千代、古今亭志ん陽・駒子、桂南なん、神田紅、風藤松原、ストレート松浦、春風亭一之輔。(敬称略)
ちば作品は順不同に、桂やまと、立川談幸、チャノマ、立川吉笑、天中軒すみれ&沢村理緒、錦笑亭満堂、笑福亭鶴光、三遊亭歌奴、小泉ポロン、古今亭圓菊、桧山うめ吉、柳家蝠丸、柳亭明楽&春風亭吉好&桂翔丸、古今亭菊春、林家はな平、三遊亭律歌、柳亭燕路。(敬称略)
佐々木さんは、寄席で一番好きなのはボーッと見ること、帰りにその日の寄席の話をしながら一杯飲んで帰るのが楽しみ、とのこと。かわら版の絵は見た人しか、描かないことをポリシーにしているという。
ちばさんは、落語鑑賞を計画的に行くのは苦手だそうで、時間ができると「東京かわら版」を見て、近場の面白そうな会に足を運ぶとか。なんでも見る派で、講談や浪曲も好き、寄席で半日つぶして面白い高座が三つもあれば「今日は当たりだったな」と思うそうだ。
今回の展覧会から会場で落語会を開く試みも始めた。僕の行った18日は林家あんこさんが「化け物使い」を演じ、さらに南京玉すだれを披露してくれた。木戸銭は500円のワンコイン!(展覧会の入場は無料)21日に柳亭市童さん、25日に雷門音助さんの落語会が予定されている。(各回15時~15時半)展覧会は27日まで開催(10時~18時。23日は休館日。27日は16時まで)。演芸ファンの方は必見。足を運んでみたらいかがでしょうか。
「けんこう一番!~三遊亭兼好独演会」に行きました。「黄金の大黒」「目黒の秋刀魚」「茶の湯」の三席。ゲストは動物ものまねの江戸家猫八先生、和装で座り高座を勤めた。
猫八先生、「座り高座だと気持ちが落ち着く。そして、いつものテンポの良いトークが理屈っぽくなる」とのこと。落語の「つる」が大好きだと言って、サワリをちょっと演ったあと、「でも、ツルは枝に止まれないんです」。この噺ではおそらく、タンチョウヅルをイメージしていると思うが、生態学上、枝に止まれないのだそうだ。
だが、一種類だけ枝に止まるツルがいて、それがカンムリヅル。アフリカのウガンダに生息していて、国鳥にもなっている。それで知り合いのウガンダに在住した経験のある動物園職員に訊いたら、アンコレ族の使うニャンコレ語(スワヒリ語の一種なのだろう)でツルのことをエニャワーワーというのだそうだ。その言葉から、新しい小咄を発想する猫八先生の柔軟性に感服した。
兼好師匠の「目黒の秋刀魚」、マクラでサンマが不漁で高級魚となり、目黒が高級住宅街になってしまって、「サンマは下魚」という前提のこの噺が演りにくくなったと振った後に、本編へ。
殿様がこれまで見たことのない黒光りした長い刀のような魚を前にして、目をらんらんと輝かせながら、夢中で10本ものサンマを平らげてしまう情景が鮮やかに浮かぶ。大根おろしに、醤油をかけて、ジューッ!実に美味しそう!
「茶の湯」。作法が全く判らない隠居と定吉の“風流”ごっこが活写される。青黄粉に山葵、そして椋の皮がミックスされ、茶釜が蟹みたい!に泡だらけなのが愉しい。自分たちだけ苦しい思いをするのは嫌だと、米屋や魚屋、生花の先生に伊勢屋の若旦那まで犠牲になって、茶室に掛けられた掛け軸には「四面楚歌」と書いてあるというのが面白い。
通常と違って、誰も来なくなったので、隣町の三軒長屋の豆腐屋と鳶頭と手習の先生の3人が最後の犠牲者となるという…。終わりに盛り上がりを持ってきたいという兼好師匠の工夫が嬉しい。