渋谷らくご 談吉イリュージョン、そして昇太・はだか・高田漣 懐かしのカラフルロスタイム

配信で渋谷らくご「談吉イリュージョン」を観ました。前方に瀧川鯉八師匠が上がり、「勝手にしやがれ」と「若草」の二席を披露した後、立川談吉さんが登場。新作ネタ卸し「太郎お伊勢」を掛けたが、これが素晴らしかった。

わかめ漁師の太郎と伊勢海老の人魚お伊勢との出会いが美しい。上半身は赤い髪で白い肌の艶やかな美しい女性だが、下半身は伊勢海老という人魚の首にわかめが巻き付き、苦しんでいるところを太郎が助けてあげた。人間を見て、「刺身にされてしまう」と恐れおののくお伊勢だが、太郎がきちんと説明し、その人柄の良さもあったのだろう、「人間は恐いもの」という固定概念がなくなった。

太郎の話は人魚にとっては大変に興味深いもので、その話を聞くのがとても楽しく思えた。そして、沖で会って話をする日々が続いた。太郎はお伊勢の美しさに惹かれ、お伊勢は太郎の正直さに惚れた。相思相愛。だが、このことがお伊勢の父親である海の王様に知られてしまった。

「添い遂げるなら許してやる」と父親は言っているという。そして、条件として一か月一緒に暮らしてみなさいということになった。だが、お伊勢が陸に上がると、下半身が綺麗な脚になったが、逆に上半身は伊勢海老という逆転が起きてしまった。まだ若いお伊勢は半分しか人間の姿になることができないのだという。しかし、太郎はそんなことはお構いなしだった。ありのままのお伊勢を受け入れ、一緒に暮らした。そして、条件の一カ月が経とうとしていたが…。

一カ月目の朝、お伊勢が泡を吹いて意識がない。太郎がいくら起こしても反応がない。「これまで無理をさせていたのか」…太郎は海へ返してやろう、と船を漕いでお伊勢を海の中へ。すると、海の王様、すなわちお伊勢の父親が現われた。「お伊勢の命を助けてくれ」とお願いする太郎。王様は「承知した。だが、その代償を覚悟しておけ」と言って海へ消えた。

やがて、海の中から伊勢海老が現われ、脱皮をする。そこには全身が人間になったお伊勢がいた。海の王様が再び現われ、言う。「この女を生涯、面倒を見よ」と太郎に命じた。それが“代償”だったのだ。太郎は喜んでその代償を受け入れた。なんという美しい物語なのだろう。

談吉さんの創作能力の高さに感服すると同時に、それをきちんと聴かせるストーリーテラーとしての才能にも拍手喝采だった。

「昇太・はだか・高田漣 懐かしのカラフルロスタイム」に行きました。きのうに続き、ざぶとん亭ほぼ20周年フェス!の第3弾である。

オープニングアクト~♬胸の振子 高遠彩子・昇太/唄うスタンダップコメディ 寒空はだか/♬クレージーラブ 春風亭昇太/演奏 高田漣/中入り/「茶の湯」春風亭昇太/♬東京ブギウギ~東京タワーの歌 一同

ざぶとん亭さんが2006年8月から六本木SUPER DELUXEで開催した「寒空はだか カラフルロスタイムショー」が今回の企画の原型にある。ホールに掲示してあったチラシから毎回のゲストを辿ると、①春風亭昇太/今野英明②三宅伸治/清水宏③柳家喬太郎/ポカスカジャン④林家彦いち/栗コーダーカルテット⑤春風亭昇太/SAKEROCK⑥あがた森魚/清水ミチコ⑦三遊亭白鳥/バンバンバザール(第8回から10回までがなぜか欠落)⑪遠藤賢司/清水宏⑫みうらじゅん&安斎肇の勝手に観光協会/ウクレレえいじ⑬三遊亭白鳥/ショピン、となっている。第13回が2008年11月だから、その時期頻繁に開催されていたようだ。

寒空はだか先生の高座はいつも落語会などのゲストで出演されているときよりも持ち時間が長いので、たっぷりと堪能できた。坂本九の歌真似、中島みゆきを歌っても、松山千春を歌っても小林旭になってしまうネタ、それに秀逸はどんな歌を歌っても最後に♬ハウスシチューを付けると何でもホッコリしてしまうネタが面白かった。

昇太師匠は六角精児さんのバンドで歌うときのために自分で作ったという、♬クレージーラブを熱唱。マルチな才能の片鱗を窺わせる。オープニングアクトで歌った高遠彩子さんはカラフルロスタイムショーのレギュラーだったそうで、美しい歌声で魅了した。

そして、やっぱり高田漣さん。自作の歌を中心に、お父様の高田渡さんの歌もいくつか披露してくれた。56歳で急逝した伝説のフォークシンガーは「落語家みたいな父でした」と、短い小咄風の曲を数曲歌ったのがとても良かった。ギター一本で自分の世界観を創るミュージシャンってかっこいいなあと思った。贅沢な時間でした。