オレスタイル 春風亭昇太「明烏」、そして こみち噺 饗宴 春風亭百栄「チャンネル違い」

「オレスタイル~春風亭昇太独演会」に行きました。「お化け長屋」「僕への手紙」「明烏」の三席。開口一番は春風亭柳雀師匠で「青菜」だった。

「僕への手紙」。昇太師匠は心がほんわかする新作が巧い。小学校5年生のときにクラスの皆で土に埋めたタイムカプセル。「嫌いな女の名前」を書いたカードに、実は女房になったリカの名前が書いてあって、それを誰にも見られたくないと同窓会の前に掘り出そうとするが…。未来の自分へ宛てた手紙には「出世していないかもしれないけど、他人と較べたり、卑下したりしないでください」という文面。そして、「新沼謙治に似ていると同級生にからかわれているリカちゃんのことが好きだ」と…。胸がキュンとなるね。

「明烏」。時次郎がシクシクと泣いている、盛り上がらない酒宴で芸者たち女性陣がもらい泣きしているというのが可笑しい。そして、一人幇間だけが、ヨォ!と叫んでいるという…。その映像を想像するだけで笑ってしまう。

そして、浦里のいる部屋に無理やり連れていかれるときの時次郎。「嫌です!汚らわしい!あなたたちは恥ずかしくないのですか!二宮金次郎という先生は背中に薪を背負って本を読んでいたんですよ!」。それに対し、おばさんが「その薪を売ったお金で吉原に遊びに来ていたのよ!」。

翌朝。源兵衛は女郎に「恥ずかしくないのか。二宮金次郎先生を知らないのか」とふられたと言うと、太助が「俺は敷いてある布団の中を見たら、薪に敷き詰められていて、上に二宮金次郎と書いてあった!」。爆笑!

「こみち噺 饗宴~四人のシェフ」に行きました。柳亭こみち師匠は古典落語の主要人物を女性に変えた、いわばこみち版の改作を沢山作っているが、今回はその作品を他の演者に演じてもらい、将来の古典として残せればという狙いの企画だ。だが、白酒師匠は大幅改編、百栄師匠は全く跡形もない噺に変えていて、そちらの方が面白かったという…これも落語の多様性の魅力だろう。

「そばの清子」蝶花楼桃花/「船徳と嫁姑」桃月庵白酒/中入り/「チャンネル違い」春風亭百栄/「女版 不動坊」柳亭こみち

白酒師匠の「船徳と嫁姑」。嫁姑という要素を完全に排除した。船宿に居候している若旦那の徳は親方に「船頭になりたい」と懇願するが、無理だと拒まれる。すると、徳の母親である相模屋女将が現れて、「この子の目の色が変わっている。至らないところもあるだろうが、その分は私も手助けするので、船頭として雇ってくれないか」と援護射撃をするので、親方も断りきれない。

それでも徳に船頭は無理だと客を取らないようにしていたが、四万六千日の一番忙しいときに来た客が犠牲になってしまう。徳が船を漕げないで困っていると、屋形船に乗った母親が駆けつけ、連れて来た体力自慢の屈強な男たちが黒装束で徳の手足となって船を漕ぐ。それはまるで人形浄瑠璃文楽のようだというのが可笑しい。徳が「自分独りの力で漕ぎたい」と言うと、母親は「男を見せておくれ」と口では言うが、実は船底で数人の男たちが泳ぎながら船を動かしているという…。そんな過保護な状態で何とか大桟橋まで到着する騒動記が面白い。

百栄師匠の「チャンネル違い」は、こみち版「あくび指南」の改作と謳っていたが、実のところ百栄師匠の持ちネタだ。2015年4月、落語協会二階の勉強会「ももちゃれ」で初演、同じ月にらくごカフェ、道楽亭でも掛けているのを聴いている。

おきぬちゃんが源ちゃんを誘って、チャネリングという看板を掲げたチャネラーを訪ねる。(ここまでは「あくび指南」っぽい)。おきぬちゃんは前世を占って欲しいと頼むと、三世代前の映像が見えるという。継ぎの当たった着物の子どもが鬼ごっこ、もしくは花いちもんめをして遊んでいる。5人だが、数えるとなぜか6人。座敷童だったのか!二世代前の映像は、中がシュワシュワ、全体的に茶色で、半透明。ビール瓶か!

そして、一世代前。土と草の匂いがする。泣きじゃくっている。虎が三匹いる。白い丸いものを棒のようなもので叩いている。読み取れる数字は44、31、16。1985年4月17日。バース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発!泣いている自分は槇原だ!面白かった。