春風亭かけ橋「嶋鵆沖白浪」連続口演「三宅島の再会」「闇の島脱け」

配信で春風亭かけ橋「嶋鵆沖白浪」連続口演の第4回を観ました。

第七話「三宅島の再会」

大坂屋花鳥ことお虎は三宅島に到着するが、島方取締役の壬生大助に気に入れられ、罪人でありながら特別な待遇を受ける。お虎も「身に覚えのない罪をかぶされた」「親の借金を返すために吉原に身を売った」と色仕掛けで取り入り、立派な一軒家を与えられて暮らすことになる。この世話をしたのが壬生の手下として働いている勝五郎、そして庄吉である。どちらも罪人として三宅島に流されたが、持ち前の容量の良さで壬生に取り入り、人並みの生活ができている。

勝五郎は千住の小菅屋の息子だったが、道楽者で博奕打ちになった。父親が女郎上がりのお扇婆を後妻に貰ったが、この女が湯屋の重吉、通称湯屋重と男女の仲になっていて、小菅屋を乗っ取ってしまった。勝五郎はその仇を討とうとしていたが、逆に召し捕りとなってしまい、女房と息子を残して三宅島に流罪となった。

庄吉は十五歳。赤坂の八百屋の倅だったが、両国で巾着切りを始め、大名お抱えの玉垣という力士の刀の小柄を奪ったことから、その度胸を買われ、両国界隈の巾着切りの親分になり、「三日月小僧」と渾名された。だが、三社祭である親分の巾着切りに失敗し、その男から意見され、「子分になりたい」と志願して三十両を貰って一旦別れたが、捕まってしまい、三宅島へ流された。

その親分というのが、佐原の喜三郎。その話を聞いたお虎は自分が成田にいたときに十両入った紙入れを盗まれ、困り果てていたところを救ってくれたのが喜三郎親分だという。その十両を盗んだは「おいらかも」と庄吉。さらに勝五郎が自分が土浦の皆次親分のところに世話になったときに勝五郎と出会っているという。三人が「喜三郎」で繋がった。

お虎が切り出す。「皆、縁があるんだね。娑婆に未練はないかい?一緒に島抜けをしないか」。お虎は「罪をかぶった」というのは大嘘で、梅津長門という間夫が大恩寺前で人殺しをしたのを逃がすために、大坂屋に火付けをして吉原を火事にした犯人だと告白する。梅津がその後、昔の女と夫婦同様の暮らしをしていると聞き、恨みを晴らしたいと思っているという。

勝五郎もお扇と湯屋重に復讐をしたい。庄吉は喜三郎親分に裏切ったのではないと言いたい。皆、思いはそれぞれなれど、島抜けをして娑婆に戻りたいと思っている。そんな中、八丈島に流刑となった喜三郎が病気のため、途中の三宅島で下ろされた。病気で床に伏していたが、水が飲みたくなり、沢へ足を運ぶと、繁みから大海原が見える。「島抜けしたい…」。そう呟くと、「相談に乗りましょうか」という声が。

第八話「闇の島脱け」

「親分、お忘れですか?三日月小僧の庄吉です」。声の主は庄吉だった。喜三郎は驚き、話を聞く。土浦の皆次親分のところにいた頃に知り合った勝五郎もいると聞いて、さらにビックリ。庄吉は「親分に是非会って頂きたい人がいるんです」。案内されると、そこにはお虎が。「親分さん!」「お虎か!」。大坂屋に身売りして、三宅島に流刑になるまでの顛末を話す。喜三郎も川に溺れた子どもを助けたのが逆に災いして、人相書を見た十手持ちに捕まり、島流しとなったと話す。

四人の思いは同じだ。江戸へ戻りたい。地獄の釜の蓋が開くと言われている七月十六日は船を出してはいけない忌日。その日を島抜け実行の日と定め、準備を進めた。七月十四日から十五日にかけ、御笏神社の神主を務める壬生大助は雨乞いの儀式をおこなった。三宅島に伝わる二つの宝、壬生の宝剣と金無垢の百尊像を使い、雨を降らせた。そして、十六日には雨は止み、晴れわたる。

お虎のところに壬生が「疲れた」とやって来た。お虎は「御前に見捨てられたかと思った」と芝居を打つと、壬生は「真心の証拠」として、壬生の宝剣と金無垢の百尊像をお虎に預けた。やがて酔って眠った壬生の喉元めがけて剣を刺そうとしたが、やり損なう。そこへ喜三郎が現れ、剣を奪って壬生を斬った。

一方の勝五郎と庄吉は金の工面のために、金をためこんでいると噂の普済院の和尚を狙う。和尚が床の間の百両を渡すところで、この寺の坊主・玄若が背後から和尚を刺した。玄若は元湯島の根生院の納所坊主で殺害を働いた罪で三宅島に流刑になっていた坊主だ。玄若は勝五郎たちが企てている島抜けを事前に知っていて、「仲間に加えてくれ」と頼んだのだ。因みに玄若はお虎が火付けした吉原の火事騒ぎで死骸を路上に放置してしまったために、殺人が露見したという因縁がある。

玄若が加わり、五人となった島抜け決行。しばらくすると、東の空に雲が浮かび、嵐の前兆を予感させる。そして風雨が激しくなり、海も荒れて、五人は必死に船にしがみつく。やがて風雨が止み、静かになるが、暗闇である。どこからか、ヨーソーロという声が何度も聞こえる。最初は助け船かと思ったが、そうではない。声が近づき、わかった。船幽霊だ。船が動かずにクルクルと廻っている。

喜三郎の機転で、金無垢の百尊像を海に投げ、壬生の宝剣で空を切る。すると、船は動き出し、夜が明けた。あの世とこの世の境を彷徨っていたのか。そして、また嵐が起きる。それは壬生の宝剣を使ったからだ。二日二晩、嵐の中を必死に堪えていると、三日目の朝に浜に打ち上げられた。下総銚子だ。「娑婆だ!」。五人は喜び抱き合った。