七代目三遊亭円楽襲名披露興行「試し酒」

新宿末廣亭の七代目三遊亭円楽襲名披露興行二日目に行きました。
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口上。司会は竹丸師匠。好楽と新円楽は親子だが、師弟ではなく、五代目円楽の兄弟弟子になると説明。七代目は五代目から芸の英才教育を受け、父・好楽からは人の道を教えられた、と。この人が他人の悪口を言っているのを聞いたことがない、「悪口をいつも言っているのは萬橘」と冗談を飛ばした。
文治師匠は浪曲の世界では「師匠の節の真似をしたら真打になれない」と言われているが落語にも通じる、と。師匠の得意ネタを真似するよりも自分が好きだと思うネタに磨きをかけることが大事だと言って、「新しい円楽像」に期待した。そして、先代の桂小南師匠の口癖を餞に贈った。「嬉しければ稽古、悲しければ稽古、悔しければ稽古」。奥が深い言葉だ。
好楽師匠は「この子は人前で喋るのが苦手な子だった」と明かす。だから、落語家になる気など全くなかった。本名の苗字が家入。七代目が駒沢大学在学中に友人が自宅に電話して、母親が「はい、好楽です」と出たのにビックリして、本人に尋ねると「うち、ラーメン屋なんだよ」(笑)。友人にも父親が落語家であることを明かしていなかったそう。そんな息子が円楽になるなんて…という感慨は一入だろう。
円楽師匠の「試し酒」。久蔵が五升飲めるか、飲めないかで主人の近江屋と知人の旦那が賭けをしているのを久蔵自身が客観的に見て楽しんでいるような風情が面白い。自分が飲めなかったら、主人に散財させてしまうから申し訳ないと思っているかと思いのほか、一升入りの大盃を五杯飲みながら、両者の顔色を窺っている悪戯っぽいところもあって、最後に五杯飲み切った後、「おらも箱根に行くべえ!」と叫ぶのが面白かった。
二杯目のとき。この酒を拵えたのは誰か知っているか。唐土の儀狄という男が帝に献上し、あまりに美味いものだから、これを飲み過ぎると人が誤る、国が滅びるから拵えてはならないと小言を食らった。こんな間尺に合わない話はねえ!
世の中で一番好きなものは、やっぱり酒か?と問われ、金だと答える。なるほど、それで田地田畑を買うのか。いやあ、稼いだ分だけ飲んでしまう。
おらの田舎は丹波だ。酒呑みの出たところだ。大江山の酒吞童子はおらの弟だ。嘘だよ!どこか旦那二人をからかっているところが、久蔵の可愛らしさだろう。
都々逸も面白い。お酒飲む人、花なら蕾、きょうも咲け咲け、明日も咲け。雨戸叩いて、もし酒屋さん、無理言わぬ酒頂戴な。水に油を落とせば開く、音してつぼまる尻の穴…。久蔵はユーモアを持ち合わせた教養人だ。
鯨飲馬食というが、最初の一杯と最後の一杯はまさにそれ。円楽師匠が扇子を広げて盃を一気に飲み干す仕草は圧巻だった。