津の守講談会 祝!二ツ目昇進 宝井小琴「白羊塚の由来」

津の守講談会九月初日に行きました。きょう、9月1日から宝井琴星門下の小琴さんが二ツ目に昇進するということで、きょうから三日間は小琴さんが毎日出演してのお祝い興行だ。
「三方ヶ原軍記」一龍斎貞昌/「一心太助 旗本との喧嘩」田辺凌々/「千葉周作 幼年時代」宝井優星/「白羊塚の由来」宝井小琴/「円山応挙の幽霊画」宝井梅福/中入り/「中山安兵衛道場破り」神田山緑/「伊藤左千夫と明治の大水害」田辺一乃
小琴さんは前座修行4年1ヶ月を経ての昇進だそうだ。きょうの読み物は、入門のきっかけになった師匠の琴星先生の新作講談だそうで、手拭いもこの世界観を基にデザインしたという、思い入れのある高座だった。
舞台は琉球。猟師の息子に生まれた松寿は「学問を学べ」という父の言いつけで、首里蓮華堂に通い学んでいたが、学問が性分に合わず、授業を抜け出しては森に行って遊んでいた。ある日、裏山で真っ白の山羊を見つけ、追いかけているうちに迷ってしまった。雨も降り出し、困っていると、小屋を一軒見つける。そこには美しい十六歳くらいの娘がいて、親切に帰り道を教えてくれた。
もう一度、あの娘に会いたい…と考えて森に行くが、なかなか出会えなかった。そこに狩人らしき老人が現れ、松寿を怪しむ。小屋にいた娘を探していると言うと、「その娘は清姫様といい、源為朝のご息女だ」と教える。そして、「お前は敵の回し者か」と疑い、松寿は木の根元に縛り付けられてしまった。そこに清姫が現れ、松寿を縛った紐を解いてやり、命を救ってあげた。二度も助けてもらったことに感謝する松寿。
清姫は「私を命の恩人と思うなら、ひとつお願いがある」と言う。その願いとは…自分と夫婦になってほしいというものだった。松寿は即答できない。「両親に訊いてみないといけない」と言うと、清姫は「今、ここで返事がほしい」と迫る。狩人らしき老人が「所詮、薄情な人間だ」と諦めるように言うと、清姫は「この方しかいない」と強気だ。老人は「名案がある。この世で一緒になれないなら、あの世で一緒になったらいかがですか」。
これを聞いて、松寿は逃げる。必死に逃げて、蓮華堂の境内に辿り着いた。住職にこの話をすると、松寿を鐘の中に隠そうということになった。そこに獣のようになって追いかけてくる清姫。「逃げられると思うなよ」。住職は清姫の上に鐘を落とした。すると、清姫の怨念が真っ白い山羊となって現れる。松寿は弓矢で山羊を射る。
源為朝は弓矢の名手だった。清姫は松寿の弓の腕前を買って、夫婦になりたいと言ったのだった。山羊は白羊塚に埋葬され、供養されたという。何とも幻想的な世界に魅了された。素敵な高座だった。
これから、二ツ目として精力的に活動するであろう宝井小琴さんを応援したい。