柳家喬太郎みたか勉強会

柳家喬太郎みたか勉強会に行きました。

昼の部 「お見立て」柳家小太郎/「縁切榎」柳家喬太郎/中入り/「七度狐」入船亭遊京/「偽甚五郎」柳家喬太郎

夜の部 「浮世根問」柳家小太郎/「品川発廿三時廿七分」柳家喬太郎/中入り/「鰻の幇間」入船亭遊京/「鶏もつ煮込み」柳家喬太郎

小太郎さんは一昨年11月に二ツ目に昇進して以降、イキイキと高座を勤めているのが気持ち良い。きょうもマクラで夏に鳴き出す五月蠅いセミについて、その見た目のディテールに細かく言及して、気持ち悪くて大嫌いだと熱弁していたのが可笑しかった。

その後に高座に上がった喬太郎師匠が、ウルトラQ「ガラモンの逆襲」に出てくる、宇宙怪人セミ人間、チルソニア遊星人を敵に回すのか!と攻撃。これが後にバルタン星人に改造されるわけで、ウルトラ好きとしては許せない!と訴えたのが面白かった。

遊京さんは9月21日から真打に昇進して、入船亭扇白を名乗る。元々、遊京という名前も大師匠にあたる先代の扇橋師匠が付けてくれたもので、「茶が咲いて遊京白き香を放つ」という句を添えてくれたそうだ。この「白き」の白を遊京さんは「真っ白なところから始める」という意味で大層気に入って、今回扇白という名前にしたという。

遊京さんは二ツ目になったときに知り合いの中国人に連れられて、80日間で中国全土をくまなく回る旅をしたそうだ。そのときに起きたエピソードを何個かマクラで喋ってくれて、「事実は小説より奇なり」的な面白さがあった。「若いときにしかできないんだから、行ってきなさい」と言ってくれた扇遊師匠の助言が素晴らしいと思った。

「縁切榎」。野呂井照雄の優柔不断の面白さをよく表現している。二人のタイプの違う女性から優しくされ、「身を立てるので身辺を整理する」と別れを切り出すと二人とも「貞女両夫に見えず」とあっさりと承知するがゆえに、「切れない!」。それを聞いて半六とお仙の夫婦が面白がっているのが、いかにも落語で良い。

「偽甚五郎」。魂をこめて彫り物をするということ。その精神には「自分が名人だ」というような奢り昂りは一切ないのだと思う。なまじ腕が良いばかりに甚五郎を騙って金儲けをしていた久蔵に対し、甚五郎は怒ることをしない。寧ろ、「あなたには腕があるのだから、心掛けを変えるだけで良いものが彫れる」と助言する。安直な表現かもしれないが、「謙虚な心を持ちなさい」ということだろうか。これは彫り物に限らず、クリエイティブを志す人間すべてにあてはまる。

「品川発廿三時廿七分」。三遊亭円朝師匠作「離魂病」の抜き読み。お若をつけ回して品川から神奈川までついてきた博奕打ちの勘太。お若が逃げてぶつかった爺さん、甚兵衛が助けてあげようとすると、勘太は甚兵衛が勘当した息子だった。さらに、甚兵衛はお若が一緒になりたいと思っていた伊之助の養父だった。喬太郎師匠は「これをご都合主義と言います」と注釈していたが、円朝師匠はこうした「因縁」を積み重ねることで、数々の名作長編を創作したのだ。9月に開催される「扇辰・喬太郎の会」で「離魂病」は終幕する。お若と伊之助は神奈川の土地で百姓をして二回り(24年)が過ぎたところで何が起きるのか。楽しみである。

「鶏もつ煮込み」。2017年鈴本演芸場八月上席特別興行「喬太郎三題噺地獄」二日目、「寅さん」「もつ煮込み」「春風亭昇太」で創作した噺から「春風亭昇太」の要素を取り除いて、大幅に手を加え、先月28日~31日に開催された「SWAクリエイティブツアー」で掛けた作品だ。

フーテンの寅さんのように独身を貫く主人公が一念発起して、寅さん酒場を開店させるが…。店の周りを黄色と黒の幕で覆い、「これじゃあ、寅じゃなくて虎だよ。阪神酒場になっちゃう」とか、メニューにある鹿のカツは「シカカツ?カツシカ?…葛飾?」とか、ランチの御膳コースに松と竹はあるが梅がないのは「松竹だから」とか。どんどん高座に掛けて噺をブラッシュアップしているのがすごい。

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