唄う浅草

浅草演芸ホール二月中席三日目昼の部に行きました。今席は落語協会百年記念興行、昼の部は「唄う浅草」と題して、古今亭菊之丞師匠が主任を勤め、大喜利で昭和歌謡ショーをおこなう特別企画だ。

「転失気」春風亭らいち/「道具や」金原亭馬吉/「真田小僧」柳家さん喬/音楽 のだゆき/「無職夫の彼氏代行」柳家風柳/「堀の内」柳家三之助/中入り/漫談 大空遊平/「権助提灯」古今亭菊志ん/「代書屋」春風亭三朝/漫才 米粒写経/「歯ンデレラ」林家きく麿/中入り/「豆や」柳家花飛/「相撲風景」林家たけ平/粋曲 柳家小菊/「親子酒」古今亭志ん雀/ムード歌謡漫談 タブレット純/「お見立て」古今亭菊之丞/大喜利 唄う浅草

唄う浅草。司会はたけ平師匠、演奏はギターが柳家小せん師匠、アコーディオンが遠峰あこ先生。歌手は花飛さん、三朝師匠、志ん雀師匠、小菊師匠、菊之丞師匠、タブレット純先生という布陣。まずは客席と一緒になって全員で♬東京ラプソディーでスタート。藤山一郎さんの昭和11年のヒット曲だ。

そして、トップバッターは来月に真打昇進する花飛さん。アリスの♬チャンピオンだ。ボクサーをイメージした衣裳で、センターに仁王立ち、微動だにせず真剣な顔で唄う姿は素人のど自慢を彷彿させる(笑)。たけ平師匠から「(バスローブを羽織っているのが)まるで人間ドックを待っている人みたい」と突っ込まれたのが、的を射ていて可笑しかった。「拳闘だけに、健闘しました」。鐘二つ、かな。

次は三朝師匠で沢田研二の♬勝手にしやがれ。白の上下のスーツにシルクハットでジュリーになりきっているつもりなのが愉しい。お約束で歌唱の途中で帽子を客席に投げ、喝采。たけ平師匠が「(黒のネクタイ含め)告別式に行くの?」「落語でも帽子を飛ばせば受けるのでは?」。可笑しい。

続いて志ん雀師匠が中島みゆきの「銀の龍の背に乗って」。正確に言うと、この曲は平成15年の曲だが、たけ平師匠が「サザンや中島みゆきのように、昭和、平成、令和になっても活躍し続ける歌手もいる」とフォロー。そして、白塗りにカツラを被り、赤の振袖姿という女装で登場して真面目に歌い上げる。思わず、たけ平師匠が「喜瀬川?仮装大賞じゃない!全然歌詞が頭に入ってこない!」と突っ込み、大爆笑だった。

そして、「寄席の都はるみ」小菊師匠が♬好きになった人。正統派。この歌、メロディーといい、歌詞といい、とっても良いですね。サビの「好きになったぁ人ぉ!」のところで、客席に指を差すアクションも良かった。理由はわからないけど、僕は聴いていて、胸にこみあげるものがあって、涙が溢れてしまった。懐メロっていいよねえ、と思える歌唱。たけ平師匠が「師匠は毒されちゃ駄目ですよ」と言うと、小菊師匠が「三味線がないと、すごい楽!」と本音を言うのが可笑しかった。

主任の菊之丞師匠は美川憲一の♬さそり座の女。たけ平師匠が「昭和47年、歌謡界では東海林太郎が亡くなり、演芸界では柳家金語楼師匠が亡くなった。まさに大スターが星になった年のヒット曲です」と紹介したのが良かった。菊之丞師匠はメイクを施し、シルバーのピカピカのスーツにショールを巻いて歌唱。歌い終わったら、「あら、タケちゃん!」。「気持ち悪いですよ!」「浅草というより、新宿二丁目のスナックが似合うかも」「理事なんですから!」「楽屋で前座さんがお茶出しながら笑うのよ」。ちなみに、ピカピカスーツは東急ハンズで購入、ショールは「かみさんが成人式のときに使ったものを捨てるというので、貰った」(笑)。

そして、歌謡ショーのトリはタブレット純先生。西城秀樹の♬情熱の嵐を熱唱、「君が望むなら」「純ちゃん!」「命をあげてもいい」「純ちゃん!」と観客と一体となる。そして、アンコール。一旦袖に下がって、ドレスに着替えて、越路吹雪の♬愛の讃歌なんだけど、背中のチャックが閉まらずに、最前列のお客さんに手伝ってもらうというのもお約束だけど、愉しい。

最後は歌手全員がまた揃って、客席と一緒に藤山一郎の♬青い山脈を歌う。昭和24年のヒット曲。オープニングとエンディングを藤山一郎に統一するところが何とも憎い演出だ。そして、撮影タイムも設けるサービス。「タブレット純さんが違和感ない並びになっているのがすごい」とたけ平師匠が言っているのが可笑しかった。皆さん、お客を喜ばせるのが第一、その上で自分も楽しんじゃおうという…「芸人」なんだなあと思う。楽しい大喜利であった。