鈴本演芸場正月初席第三部 柳家三三「締め込み」
上野鈴本演芸場正月初席二日目第三部に行きました。「初席は鈴本の第三部」と小三治師匠が主任のときから決めている。2025年も柳家三三主任の第三部に伺った。
奇術 アサダ二世/「寿限無と寿茂美」&芸者さんの一日 柳亭こみち/「糖質制限初天神」鈴々舎馬るこ/ウクレレ漫談 ウクレレえいじ/「愛宕山 梅花の誉れ」宝井琴調/百面相 柳家さん生/漫才 風藤松原/「ぜんざい公社」柳家権太楼/「ざるや」桃月庵白酒/粋曲 柳家小菊/「勘定板」五街道雲助/中入り/寿獅子 太神楽社中/「蜘蛛駕籠」入船亭扇遊/「小言念仏」春風亭一朝/紙切り 林家楽一/「普段の袴」柳家喬太郎/ものまね 江戸家猫八/「締め込み」柳家三三
立ち見が出て、満員御礼の客席。黒紋付に袴という出で立ちの噺家さんがほとんどというのも正月興行らしい風景だ。中入り後の寿獅子には30人以上のお客さんが並んで、ご祝儀を獅子の口の中に入れて頭を噛んでもらっていた。コロナで自粛していた頃のことを考えると、「ようやく戻ってきたなあ」と感慨深いものがある。
アサダ先生はトランプの手品を少しだけ見せた後、客席にトランプを投げるサービス。1セットのトランプがなくなるまで景気よく投げていたが、その投げ方にコツがあるようで、実に鮮やかなものだった。これも正月興行ならではだろう。ちなみに僕もダイヤの9をゲットした。
こみち師匠は「寿限無」の改作。男の子と女の子の双子が生まれ、その二人に名前を付けてもらうというもので、この古典落語の肝に対する皮肉が効いていて面白かった。落語を終えて、♬梅にも春の演奏に乗せて、「芸者さんの一日」も披露。馬るこ師匠の「初天神」の改作はお馴染み。親と子の立場の逆転というだけでなく、父親が糖質制限のダイエットをしているのに、縁日には沢山の誘惑があり、それに負けないようにと娘が監視しているのが面白い。
さん生師匠もお正月ならではの百面相。二代目小満んから五代目小さん、そして馬風に伝承された芸だとのこと。大黒様と恵比寿様。風藤松原先生のことわざシリーズは何度聴いても面白い。三人寄れば、THE ALFEE。雨降って、THE ALFEE!
小菊師匠の正月らしい都々逸。笹の小舟と松葉の船頭、乗せるお客は梅の花。松竹梅になっている。楽一師匠は小学校入学前と思われる女の子2人の注文に応える気遣い。一つはパンダ。もう一つはネコ。「猫はこの後も出てきますよお」。この子たちが大人になっても寄席に来てくれますように!
喬太郎師匠の「祝儀と不祝儀によろしくな!」という大家の台詞が最高に可笑しい。猫八先生、お正月は和装で座り高座。今年の干支は最難関と言って、蛇が敵を威嚇するシーッ!その後に江戸家伝統の「ミ!」。巳ですね(笑)。
三三師匠の「締め込み」。風呂敷包みを見て、女房に男が出来て、駆け落ちするのだと思い込み、離縁だ!とすごむ八五郎も可笑しいが、お湯から帰ってきて、「お酒?お湯?」を何度も挟みながら、喋り続ける女房のおふくが最高に愉しい。八五郎の「お多福!この飯炊き女(あま)!」で火がついて、「ウンか、デバか、ウンデバか?」と八五郎が迫ったのをきっかけとした馴れ初めを息継ぎせずに一気に捲し立てるおふくに圧倒される。困惑する泥棒先生の顔が目に見えるようで爆笑の高座だった。