【大相撲夏場所】大の里が史上最速、初土俵から7場所で幕内優勝!

大相撲夏場所千秋楽、小結・大の里が関脇・阿炎を破り、3敗を守って初優勝を決めた。初土俵から7場所での幕内優勝は、先場所の尊富士の10場所を上回る史上最速記録であり、新小結の優勝は昭和32年夏場所の安念山以来、実に67年ぶりである。

大器を証明するかのような優勝だった。今年初場所に新入幕で11勝、春場所も11勝を挙げ、3場所連続で優勝争いを演じた大の里が遂に賜杯を掴んだ。小結として出場した今場所、初日にいきなり横綱・照ノ富士に両差しとなって圧倒的な勝利を収めると、大関の霧島、琴櫻も撃破、前へ前へと出ていく相撲が連日冴えわたり、新人らしからぬ落ち着きすら感じる取り口は“貫禄”という言葉を使っても良いのではないかと思わせる土俵だった。

もともとは突き押しを得意とするが、右を差して寄る四つ相撲でも力を発揮し、最近では左からの攻めも磨いており、場所ごとにパワーが増し、この勢いが止まらない。技能賞を2場所連続で受賞したのはその取り口を評価されてのことだろう。平幕の高安、平戸海に不覚を取ったが、その後は前に出る相撲に集中したことで賜杯を獲得できた。本来であれば今場所の12勝が大関昇進の起点になると考えるのが普通だが、来場所の成績次第では、すぐに大関昇進の声が掛かってもおかしくないと考えるのは急ぎ過ぎだろうか。

大関2場所目で、四股名も祖父の名跡を継いだ琴櫻が十四日目に阿炎に逆転負けして4敗目を喫し、大の里と並んでいた優勝争いのトップの座を譲ってしまったのは予想外だった。さらに上の横綱を狙える大器として期待しているが、勝負の詰めの甘さが散見される相撲が何番かあった。とは言え、11勝を挙げて先場所に続いて二桁の成績を残しているのは流石であり、さらに稽古を積んで安定感を増し、琴櫻の名に恥じない力士として活躍を期待したい。

それにしても今場所も番付の権威が問われる場所だった。初日に1横綱4大関、さらに2関脇までもが揃って星を落とすという波乱からスタートした。照ノ富士、貴景勝、霧島は怪我で休場を余儀なくされた。カド番だった霧島は大関を陥落、来場所は関脇から復帰を期する。照ノ富士と貴景勝は力士生命を懸けた土俵が続き、目が離せないだろう。また、関脇の若元春も怪我から途中休場した。再出場したが大きく負け越し、来場所の平幕からの再出発に注目したい。

関脇の阿炎は終盤戦に優勝争いを面白くしたばかりでなく、10勝を挙げた。大関獲りの期待も含め、今後の活躍が楽しみだ。大関争いで言うと、先場所負け越して前頭筆頭に陥落した大栄翔が11勝して、存在感を示したことも嬉しかった。

千秋楽に負けて敢闘賞こそ逃したが終盤戦で優勝争いの単独トップに立つ働きも見せた湘南乃海も注目していきたい力士だ。また、新入幕で10勝を挙げ、敢闘賞を受賞した欧勝馬も終盤戦で優勝争いに加わったことも忘れてはならない。前頭2枚目の平戸海が9勝を挙げて来場所の新小結が濃厚だが、大の里を破った勢いのある相撲は期待株である。

十両は怪我で幕下まで陥落していた若隆景が14勝1敗で優勝した。来場所は幕内に復帰確実、陥落前は大関候補の一人だった力士だけに、大きな星を挙げることも考えられる。また、今場所に十両に陥落したベテランの遠藤も12勝の好成績を挙げ、1場所で幕内復帰を決めた。また幕内の土俵で相撲が見られるのが嬉しい。さらに、新十両の阿武剋が13勝。番付上、入幕は難しいかもしれないが、明日の土俵を賑わせる逸材として注目していきたい力士だ。

事程左様に、次の名古屋場所も誰が優勝してもおかしくない群雄割拠の時代が続く。今場所に続いて、大の里を中心に優勝争いが展開するという予想もできるが、相撲は何が起こるかわからないから面白い。二カ月後を楽しみにしたい。