愛すべきバカ野郎たち 春風亭一之輔「千早ふる」

上野鈴本演芸場五月中席二日目夜の部に行きました。今席は春風亭一之輔師匠が主任で「愛すべきバカ野郎たち」と銘打ったネタ出し興行。①くしゃみ講釈②千早ふる③不動坊火焔④味噌蔵⑤意地くらべ⑥夢見の八兵衛⑦団子屋政談⑧茶の湯⑨寝床⑩らくだ。きょうは「千早ふる」だった。紙切りの林家楽一師匠が客席に子どもがいるのを見つけて、「切ってほしいものを言ってね」と促し、その男の子は暫く考えた後、「伊勢えび」と注文していたのが可愛かったし、楽一師匠の優しさに触れた気がして、温かい気持ちになった。

「桃太郎」春風亭与いち/奇術 アサダ二世/「たらちね」隅田川馬石/「はなむけ」むかし家今松/アコーディオン漫謡 遠峰あこ/「あくび指南」柳亭こみち/「遥かなるたぬきうどん」林家彦いち/中入り/漫才 風藤松原/「締め込み」柳家さん喬/紙切り 林家楽一/「千早ふる」春風亭一之輔

一之輔師匠の「千早ふる」。オリジナルギャグがこれでもか!というくらいに満載で全編、爆笑の渦の高座。「柳家の大事な噺かもしれないが、俺は春風亭だ!」といって心を解き放つかのような自由演技、大好きだ。

八五郎が隠居を訪ねるところから愉しい。今、「ブギウギ」の録画を全部消すのに忙しいんだよ!ハードディスクの空き容量を作って、「虎に翼」を録画しなきゃいけないんだ!そういう隠居に対し、八五郎が一斉消去すればいいとリモコンボタンを押すのが可笑しい。

百人一首という言葉が出てこなくて、二人三脚、京浜急行、村田兆治、萬田久子、千眼美子、百姓一揆、百鬼夜行…。在原業平がカリフラワーカリフラワー。歌はこの味がいいねと君が言ったから…サラダ記念日だ!

花魁道中の描写も愉快痛快。先頭の花魁が鉢巻して、後ろの花魁が順に肩に手を載せて、ムカデ人間みたいに数珠つなぎになる。それって、ジェンカ!竜田川が千早太夫にふられた理由は「口が臭いから」。当時の月刊相撲7月号の杉山邦博のドスコイインタビューに載っていた!江戸時代ですよ?に、初代の杉山さんだ!

竜田川の母親が息子のことを四股名で呼ぶのはおかしくないですか?に、藤田紀子は若乃花、貴乃花と呼んでいたじゃないか!海老名香葉子も正蔵、三平って呼んでいるし!竜田川が元気になったのは、緑効青汁を飲んだからというのも笑える。

竜田川の豆腐屋に現れた女乞食は元千早太夫。なぜ、女乞食になったのですか?という八五郎の問いに、隠居が「この5年色々なことがあったんだ」。裏切られ、罵られ、邪険にされ、人間というものが信じられなくなった。それを具体的に克明に知ると、PPAPになるぞ!それはPTSDじゃないですか?

竜田川が元千早太夫の女乞食を投げ飛ばすと、薩摩半島から大隅半島に到達し、桜島の周りを3年8カ月飛び続け、そのうちにDNAが突然変異を起こし、背中から翼が生えてきて、妖鳥シレーヌに!竜田川はデビルマンとなって、シレーヌにデビルビームを浴びせると、シレーヌは哀れ井戸の中へ…。

抱腹絶倒の一之輔版「千早ふる」を堪能、満喫した。