SWAリニューアル
SWAリニューアルに行きました。今回は他のメンバーが作った新作を演るという趣向であった。活動休止前に実施していたSWAシャッフルと同じ位置づけだと思う。他の演者が演じると、また新しい光が当たって、噺が輝きを増す。4人がユニット組んで活動する意味がこういうところにあるんだと改めて実感した。
春風亭昇太「同棲したい」(2010年 柳家喬太郎作)
マクラで小学校の頃に憧れていた岡崎友紀さんのレコード「奥様は18歳」を買ったときの思いが結実して、ラジオビバリー昼ズのゲストに岡崎さんをお招きして、そのレコードにサインをしてもらった話。東海大学4年生のときに落語家になるために中退をしたが、今はその東海大学で教授として講義をしていて、「復学」という残りの単位を取得すれば卒業できる制度を活用して、今年6月から大学に通う話。どちらも「昔にやり残したこと」を頑張れば実現できる!という良い話だ。
その流れから、定年間近のお父さんが「母さんと一旦離婚して、同棲生活を送りたい」という願望を実現するという喬太郎師匠の新作につなげたのが素敵だと思った。令和の同棲ではなく、“昭和の同棲”。人目を忍んで、四畳半で貧乏暮らし。フォークソング「神田川」や「学生街の喫茶店」の世界を昇太師匠独自の切り口で描いたのが良かった。お母さんが積極的なのも面白かった。
林家彦いち「空に願いを」(2006年 春風亭昇太作)
師匠も10年前に参加したことがある岩手県各地で行われる蘇民祭が「意味がないのではないか」と廃止になっていることを憂い、「虚と実」があってこその信仰と言って、“雨乞い”をテーマにした馬鹿馬鹿しい新作を面白く演じてくれた。
先祖代々、雨乞いの儀式を司る雨宮家に生まれたフリオ君は「運動会のリレーのアンカーに選ばれた」ことを嫌がって、イグレシアスことおじいちゃんに導かれて10日間、山に登って雨乞いをするが…。このことがフリオ君の体幹を鍛え、運動会で他のクラスのランナーをごぼう抜き、見事に優勝に導くという…。何でも前向きに捉えてぶつかる大切さが裏テーマにあるような気がした。そして、ガッツのある彦いち師匠にとても合っている噺に思えた。
柳家喬太郎「カラダの幇間」(2006年 林家彦いち作)
現代の医療の現場で“ホスピタル・クラウン”という役割が注目されているとマクラに振ったのが良かった。この噺に出てくる病院のホスピタル・クラウンは幇間の一八。「ヨォー、ヨォー」と洒落を飛ばして、患者さんの気持ちを軽くしている。その一八が大変な使命を負うことになる…。
手術は成功したが、意識が回復しないサチコちゃんに対し、東洋医学の権威である堀田先生が「サチコちゃんの身体の中に入って、病巣を取り除いてもらいたい」と一八に頼むのだ。映画「ミクロの決死圏」の世界だ。堀田先生がツボに鍼を刺した穴から一八の思い、念を送れば「一八は身体の中に入れる」という。サチコちゃんの身体の中にいた“成仏できていないお祖父ちゃん”を取り除くことで、果たしてサチコちゃんは意識を回復する…。SFの世界観だが、これが喬太郎師匠の話芸によって実に説得力のある噺になるのが凄い。感服した。
三遊亭白鳥「ロマンス恋泥棒」(2022年 春風亭昇太作)
国際ロマンス詐欺をテーマにした昇太師匠の傑作だが、これを白鳥カラーに染める。喩えをお得意の落語の世界に当てはめるパターンだ。人気漫画家・星空夢子、71歳が恋してしまったのは遠くアメリカの地でパイロットをやりながらレストラン経営を展開するビジネスマンのロベルト、51歳。ロベルトを「金髪の五街道雲助師匠」とか、20歳差を「三遊亭歌武蔵師匠は26歳下の芸妓さんと結婚した」とか。昇太師匠の作品だと恋する乙女心に胸がキュンとなるのだが、これを爆笑落語に転換してしまう白鳥師匠の力技に感心した。