よってたかって新春らくご
よってたかって新春らくご夜の部に行きました。
「新聞記事」瀧川はち水鯉/「えーっとここは」柳家喬太郎/「がまの油」春風亭一之輔/中入り/「壺算」三笑亭兼好/「粗忽の釘」柳家三三
喬太郎師匠は去年3月のSWAクリエイティブツアーでネタ卸しした新作だが、その後何度も高座に掛けることで、噺が整理されてきたように思われる。この新しい店、前はなんだったっけなあ、と思い出せないことは誰しも経験していることだが、それに加えて上司と部下が思い出しかけている店舗と品のイメージが食い違っているというのが面白い。
オムライス屋だったのでは?上司は薄焼き玉子でチキンライスを包んだもの、ケッチャプの味付けで具はハム。一方、部下はオムレツが上に載っていて、ケッチャプライスの具は勿論、鶏肉。蕎麦屋だったのでは?上司は立ち食いで、天婦羅そばの天婦羅はかき揚げ。一方、部下は小上がりがあって、板わさに蕎麦味噌で一杯、天婦羅そばの天婦羅は海老天という…。
一之輔師匠の酔っ払いの香具師に爆笑。売る商品を“蛙の汗”、スメルは匂いではなくリブ・イン、千葉の鋸山の麓、マザー牧場の近所の寺で虎が二頭逃げ出した騒動、耐熱容器にサランラップをかけてレンジで5分で出来上がり、日本刀を振り回してアベック撃退はタイガー・ジェットシンか、紙切りで藤娘を切る…。オリジナルギャグ満載、あっぱれ!
兼好師匠、元祖「いいの買ったね!」。一荷入りの甕、3円50銭を3円に値切るお祖父さんエピソードが良い。今わの際に「酒が飲みたい」と言っていたのに、酒屋が50銭負けてくれないばっかりに、祖父さんは酒が飲めずにあの世に逝ってしまった。今でも50銭負けてくれない店には祖父さんの幽霊が出るという…。
買い物上手というより詐欺師だねという台詞がはまる。「3円と3円で6円だよね!」「初めてなんです。甕と金を足すの…大きい算盤持ってきて!」。「確かに計算は合うんですが、もう一人の私が『帰しちゃ駄目』と言うんです」。混乱極まった瀬戸物屋がとても可哀想なんだけど、嫌な気持ちにならずに愉しく聴けるのは兼好師匠のキャラクターゆえだろう。
三三師匠、粗忽のマクラにはん治師匠。師匠小三治に「疲れたから俺の土踏まずをお前の踵で踏め」と言われ、自分の土踏まずで小三治の踵を踏んでいたはん治師匠が愉しい。共産党の赤旗まつりで「このアカ、出ていけ!」という小咄をやったエピソードも含め、どこまでが本当なのか判らないけど、はん治師匠のお人柄が伝わってきた。
本題。鉄瓶28号、クギさん、ロジさん、似顔絵回覧板。あっしはしがないキンピラゴボウ、杉ドン、今はこれも一つの夫婦の形かな、万感の思いをこめて、「幸せです!」。粗忽の主人公がペラペラと女房との馴れ初めを喋る件、何度聴いても愉しい。