二ツ目勉強会 やっちゃう?!最終回
らくごカフェで「二ツ目勉強会 やっちゃう?!」最終回を開催しました。2020年10月、当時二ツ目に昇進して間もない噺家さん4人に声がけしてスタートしたこの会も、第19回の今回をもって最終回を迎えた。
三遊亭花金さん、林家彦三さん、三遊亭ぐんまさん、昔昔亭昇さん、四者四様の個性がぶつかる、とても良い会だったと自負している。4人のメンバーからも、「このネタをどこかで掛けたいな」と思ったときに、この会があったのはとても大きかったという有難いお言葉をいただき、この会を続けてきて良かったなあと改めて再確認できたが嬉しかった。
そして何よりも、お客さんが素晴らしかった。彼ら4人の成長を見守ろうという温かい気持ち、応援したいという熱い気持ちが演者にも伝わってきて、「とても演りやすかった」と口を揃えて言っていたのが印象的だった。
4人のメンバーは今後、それぞれの個性を生かして、自分の進む方向性を模索しながら、個々に活動をしていきたいという思いから、この会を一旦休止ということになった。また一回り大きくなった4人で再集結できるといいね、とも話している。僕も暫くは4人それぞれの活動を客席から応援したいと思っている。
三遊亭ぐんま「平林」
マクラで「日本語は難しい」と言って、4人の名前が書かれたメクリをめくって、「昔昔亭?これをセキセキテイとは最初は読めなかった。ムカシムカシテイ?そんなわけない、ジャクジャクテイ?」とか、「彦三?ヒコサンじゃないよね?ヒコゾウ?三をザとは読めないですよ」とか、仲間の高座名をいじりながら無筆の噺に入ったのが面白かった。そして、ハイテンションに「ヒトツとヤッツでトッキッキー!」と叫びながら、平林さんに出会ったとき、平林さんは何と言ったか?!初めて聴く衝撃のサゲにぐんまさんらしさを感じた。
昔昔亭昇「ぜんざい公社」
神戸にあるチョコレートミュージアムに行ったときのエピソードをマクラに振る。一人当たりチョコレート消費量は日本が2.5キロなのに対し、世界第一位のドイツは20キロなんだそうだ。このミュージアムのオリジナルグッズを貰うために合言葉が「夢の世界へようこそ」。どんな魅力的なチョコが貰えるかと思い、勇気を振り絞って言ったら、ポストカードでガッカリしたと。本題、ぜんざいを食べるために幾つもの書類を作成しなければいけないが、どこの窓口に行っても、担当がモロボシさん。ワンオペか!がとても可笑しい。
三遊亭花金「粗忽長屋」
外国のニュースで、森の中に迷い込んだAさんが行方不明になり、大規模な捜索隊が結成されて、いざ捜索が始まったら、そのメンバーの中にAさんがいた!というのがあって、これが好きですと。何か、「抱かれている俺は確かに俺だが、抱いている俺はいったい誰だろう?」という粗忽長屋のサゲと相通じるものがあるように感じた。まめでそそっかしい男の「当人が見て、当人だと言うんだ。こんな確かなことはないだろう!」という台詞が僕は大好きだが、花金さんは全編、このまめでそそっかしい男が愉しい高座に仕上げていて、面白かった。
林家彦三「夜鷹そば屋」
泣ける。一文無しで三杯の蕎麦を食べた、悪事を重ねてきた男。自身番に突き出してくれと蕎麦屋夫婦に頼むが…。子宝に恵まれなかった夫婦と、5歳のときに両親と死に別れたという男の“親子ごっこ”が次第に気持ちがこもってくるところが素敵だ。「ちゃん!」「あいよ」「おっかあ!」「何だい?」…「いつまで蕎麦屋をやっているんだ。俺も子どもじゃない。いいかげん、俺に任せてくれよ!」。息子のふりをしてくれと頼んだ台詞が、いつの間にか本気になってしまう…。僕もこの会の4人のメンバーが“息子”のように思えてきて、その感情とこの噺が重なって、感慨深い一席となった。