きょんとちば vol.4~マイノリ60sへの道~

「きょんとちば vol.4~マイノリ60sへの道~」に行きました。柳家喬太郎師匠と劇団猫のホテル主宰で女優・脚本家・演出家の千葉雅子さんとの二人会だ。2011年7月に「キョンちば」という名前で開催され、千葉雅子さんが書いた新作落語「マイノリ」を喬太郎師匠が初演したのがはじまりだ。その後、2015年6月に「きょんとちば」とタイトルを改めた第1回で「サソリのうた」、17年7月の第2回で「秘境温泉名優ストリップ」が初演され、20年8月の第3回で「マイノリ」が再演されている。

喬太郎師匠も千葉さんも60代となり、「マイノリ」の改訂版として「マイノリ60s」を書き上げたい!という思いが千葉さんにあり、今夜はその「はじめの一歩」という位置づけで二人会が開催された。「青春や純粋さを題材にした落語を」喬太郎師匠にお願いしたとプログラムに書いてあった。

「子ほめ」柳家小太郎/「肥辰一代記」柳家喬太郎/朗読劇「伝言」千葉雅子・佐藤真弓・村上航/中入り/「芝カマ」柳家喬太郎/トーク 柳家喬太郎・千葉雅子

「芝カマ」が素晴らしい名演だった。感動した。「純粋」をテーマにとリクエストされて、最初は「おせつ徳三郎」や「すみれ荘201号」を思い浮かべたそうだが、男性同士のいわゆる同性愛を扱ったこの噺の方が、寧ろピュアなのでは?と考えたという。ただただ、純粋な恋を描きたいという思いで創った落語であり、同性愛を啓蒙するものでも、ましてや揶揄するものでもないと喬太郎師匠はトークで語った。

2014年8月の三鷹星のホールで「芝カマ」を掛けたのが初演だそうだ。千葉さんもそのときの高座を観ていて、♬神田川の「何も怖くなかった、ただあなたの優しさが怖かった」というのは、このことか!と思ったという。喬太郎師匠はそのとき、喋りながら噺を創っている感じで、3年後に再生した魚勝が自然の流れで酒を飲んじゃって、パートナーの方も爽やかに「別れよう!」という言葉を発したのだという。そして、家を出ると「青い空と白い雲」が見え、結果として夏の噺になったそうだ。

こういう落語をやってみようか、と思い付いたとき、わざと稽古をしないのだという。稽古をして固めちゃうと予定調和になっちゃう。だから、未完成のまま高座に上がって、喋りながら噺を完成させていくという流儀に「なるほど!」と思った。

千葉さんが最初に喬太郎師匠に宛てて書いた新作落語「マイノリ」は初演時、70分も演じられたことに千葉さんは度肝を抜かれたという。どうしてもオチが書けずに、喬太郎師匠に任せたら、思いがけない世界に連れて行ってくれる喜びを覚えたという。

「肥辰一代記」も、「芝カマ」も、図らずもマイノリティを扱った落語だった。これを力に「マイノリ60s」を書き上げて、来年の公演が開けるようにしたいと千葉さんが語った。とても楽しみである。

ちなみに開口一番の小太郎さんの高座の前に、喬太郎師匠と千葉さんの二人で短い寸劇が披露された。それは今回のタイトル「マイノリ60sへの道」に引っ掛けて、1972年放送のバレーボールに青春をかける男たちを描いたアニメ・ドキュメント「ミュンヘンへの道」のパロディで、ハニー・ナイツの曲が流れたのが懐かしかった。

実はこれは「携帯電話の電源を切りましょう」というメッセージをこめた寸劇で、劇団猫のホテルが始めたものだそうだ。そのアイデアを拝借して、落語教育委員会のオープニングコントが生まれたということを知った。ヘエー!