いちにさんざ 春風亭一花・桂二葉・柳家三三

「いちにさんざ~春風亭一花・桂二葉・柳家三三三人会」に行きました。一花さんは「厩火事」、二葉さんは「池田の猪買い」、三三師匠は「磯の鮑」。開口一番は柳家しろ八さんで「元犬」だった。

一花さんの「厩火事」。あんな亭主とは別れたい!と意気込んで隠居を訪ねたお崎さんだが…。「あんな奴とは別れちゃえ!」に対し、未練たっぷりで、本当は“6歳年下の愛する亭主”の心の内を知りたいと本音を吐くところが可愛い。隠居が提案した、唐土か?麹町か?を試す芝居にも躊躇いがちなところがさらに可愛い。

従来のサゲの「そんなに私の身体が大事かい?」「当たり前だ。お前がいないと働かないで酒が飲めない」では後味が悪いと考えたのだろう。その後に、お崎さんが「お酒?それは白馬かい?じゃあ、唐土だね!」と付け加えてハッピーエンドにした工夫がお見事だった。

二葉さんの「池田の猪買い」。兎に角、主人公の喜六が終始お喋りでテンションが高いのが面白い。冷え性を治すために猪肉を食べて、身体の中から温めた方が良いと丼池(どぶいけ)の甚兵衛さんに言われ、しかも肉屋で買う肉でなく、新鮮な肉の方が効果があると、池田にいる山猟師の六太夫を紹介してもらうが、そこまでの喜六と甚兵衛のやりとりから、もう喜六はボケまくりで楽しい。

さらに面白いのは、喜六が池田に行く道を忙しそうに歩いている男に訊く段。甚兵衛さんに教わった道順を全部覚えていて、「その通りに行けばいい」と突っ込まれたり、お百姓さんだと思って訊いても返事がないので、よく見たら案山子だったり。喜六のボケ、二葉さんが演じるととっても愉しくて良い。

ようやく六太夫さんに巡り会えても、喜六は一昨日撃った猪では納得せず、「新しい肉がいい」と言って、猪撃ちをせがんで出掛ける段。番(つがい)の猪がいて、肉が柔らかい雌にするか、大きい雄にするか、優柔不断なところも可笑しいが、「美味しいだろうな」とか「鍋はあるか」とか「葱もほしい」とか、狙いを定めて銃を構えている六太夫さんの横で終始喋り続けて、六太夫さんが「黙っていろ」と言うのに、まだ喋る喜六に何とも憎めない可愛さがある一席だった。

三三師匠の「磯の鮑」。吉原遊びを知らない与太郎をからかう熊さんのきつい洒落がまず可笑しい。吉原で儲かる方法を女郎買いの師匠に伝授してもらう必要がある。それには稽古を積まなくてはいけない、「情熱と覚悟」が求められると熱く語る熊さん、本当に人が悪いんだから。

“紹介状”を持って鶴本勝太郎という隠居を訪ねる与太郎。その澄み切った目を見て、洒落は洒落で返してあげようと思った女郎買いの師匠こと隠居もまた、悪戯好きだ。三番目の煙草盆を引くと、花魁が上がってくるとか。そこで、花魁の胸をえぐるとか。真面目に聞いた与太郎が女郎屋に行って実践するときのオウム返しがまた楽しかった。

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