国立講談三夜 第二夜

国立演芸場で「国立講談三夜」の第二夜を観ました。きょうは出演予定だった神田伯山先生が体調不良の為に休演、師匠の神田松鯉先生が代演された。

「家康伊賀越え」旭堂一海/「天野屋利兵衛 雪江茶入れ」神田松鯉/「力士と行司の娘」旭堂南北/「出世浄瑠璃」宝井琴梅/中入り/「血染の太鼓」旭堂南湖/「マリリン・モンロー」神田紅

松鯉先生。天野屋利兵衛の了見に感服するばかりだ。宝物を管理する当番である貝賀弥左衛門と磯貝十郎左衛門が紛失の咎のために切腹は免れない…と知ったときに、天野屋は自分が盗んだと嘘をつく。これはなかなか出来ることではない。実際には浅野内匠頭の手元に雪江茶入れはあった。一度は天野屋を疑った大石内蔵助も安堵したことだろう。そして、赤穂藩と天野屋の絆はより太いものになったという…。信用、信頼とは何かを考えさせられる。

南北先生。相撲好きとしては堪らない一席。江戸相撲の行司、式守某の娘と力士の綾川がいい仲になった。公正を旨とする行司の立場を考え、綾川はその娘と一緒に大坂に行って、大坂相撲の力士になり、大関にまでなった。なるほど。

江戸の横綱、不知火が大坂にやって来たとき、綾川のタニマチが「不知火に勝ったら、河内屋の権利を譲渡する」と言う。河内屋は酒屋、これを手に入れれば引退後も安泰だ。綾川の女房は父親からの情報で「不知火は左足を痛めて踏ん張りが利かない」とのこと、右の足取りを狙うように綾川に作戦伝授。見事に不知火に勝利して、引退後は親方と酒屋を兼業したという。

琴梅先生。松平伊賀守の家来、尾上久蔵と中村大助が碓井峠で松平丹波守の前で披露した浄瑠璃「積恋雪関扉」を、琴梅先生が常磐津で披露。また、“猪退治の一件”を尾上久蔵が講談で説明するところも、名調子。

「内密」という約束だった浄瑠璃披露の一件を丹波守がついポロッと喋りそうになり、慌てて猪退治に言い換えた。それを得意即妙に対応する尾上と中村が愉しいし、それを大層気に入った伊賀守が二人を足軽から100石取りの昇進させるところも、なかなかの殿様である。