俺たちの圓朝を聴け!牡丹灯籠 第2回

「俺たちの圓朝を聴け! 牡丹灯籠」第2回に行きました。立川談春師匠と柳家三三師匠がリレーで掛けていく「牡丹灯籠」3回シリーズ、9月3日の第1回に続き、きょうは第2回。「お札はがし」から「栗橋宿」の途中までだった。

「野ざらし」立川談春/「牡丹灯籠 お札はがし」柳家三三/中入り/「牡丹灯籠 お札はがし~栗橋宿(序)」立川談春/「元犬」柳家三三

三三師匠。お米に「お札を剥がしてください」と頼まれた伴蔵夫婦がどのような行動に出たのかが焦点だ。白翁堂勇斎が「あの二人の女性(お露とお米)はこの世の者ではない」と教え、どうしてお札を貼っているのかを説明する。普通、外から中に侵入しないように、中から心張りをかうものだが、相手は幽霊だ。幽霊を退散させる力を持ったお札を外に貼ることによってお露とお米が新三郎に会わないようにしている。なるほど。新三郎はこの二人と会うと命の危険があることも伴蔵夫婦に知らされる。

それでも執念深くお米は伴蔵にお札を剥がすように依頼する。これを断ると、伴蔵夫婦が呪われて、殺されてしまうかもしれない。さて、どうするか。夫婦で話し合った結果、百両の報酬を要求することにした。新三郎の世話をして生計を何とか立てている伴蔵夫婦にとって、これは致し方ない判断だったのかもしれない。その後の伴蔵の行動を見ると、悪党のように感じるが、この時点ではまだその予兆は完全には見えていない。

お札剥がしの他にもう一つの使命が課せられていた。新三郎が肌身離さず身に付けている金無垢の海音如来の像を奪い取ることだ。寧ろ、こちらの方が難しい。行水をしましょうと新三郎を誘うが、外に出ること、裸になることを新三郎は極端に拒否する。それを何とか言いくるめるのに、伴蔵の知恵が働いた。「白翁堂のおじさまも言っていました。身体が汚れると、悪霊が憑りつく。身を清めなければいけないと」。もっともらしい誘い文句だ。そして、守り袋の中には泥の不動様の像を入れ替えておいた。

百両を要求することにしたのにも、伴蔵夫婦の下心が若干垣間見えた。「百両あれば、一旗揚げられる」。また、海音如来の像も金無垢で大層価値があり、金になることを計算していた節がある。誰にも判らないように、裏の庭に埋めてしまって、後で掘り出そうという魂胆を見せていた。

それにしても、百両という大金をお米はどのようにして拵えたのか。伴蔵にこう言っている。「牛込軽子坂、飯島平左衛門のお屋敷から持ってきました。盗んだのではありません。娘であるお露さまの為に使うお金ですから、借用したのです。もし百両無くなったと騒ぎになれば、それは妾に居座っているお国の手落ちです。お国が憎い…」。ここでお国の名前が出てくるのも、次の栗橋宿への伏線になっていて、とても良い。

談春師匠。お露とお米の霊がお札を剥がされた高窓に吸い込まれるように入っていった翌朝。悶絶して死んだ新三郎の遺体とその周りに寄り添っていた白骨を見た白翁堂は、まず伴蔵夫婦を怪しんだ。たじろぎながらも、犯行を否認する伴蔵夫婦に対して、さらなる追及はせず、新幡随院の良石和尚に報告する。良石和尚もすべてを分かっていた。だが、あえて伴蔵夫婦を責めることはしない。このあたりに、いつか真実が明らかになるだろうと深い読みをしている良石和尚の徳があるように感じた。

ここから伴蔵夫婦の悪党ぶりが見え隠れする。自分たちの罪をカモフラージュするために、新三郎の幽霊が毎晩出てくる、関わりにあった人たちを襲うといった根も葉もない噂を広め、長屋の住人が皆転居してしまったのを見届けてから、伴蔵の故郷である栗橋へと移り住む。

伴蔵夫婦はまさに一旗揚げた。百両を元手に関口屋という荒物屋を開業し、一所懸命働いて、近郷近在で一番の大店になる。そこまではいい。だが、男というものはだらしないものだ。持ち付けない金を持つと慢心する。伴蔵もご多分に漏れずだ。笹屋という料亭の酌婦といい仲になる。これが飯島平左衛門の妾だったお国ということから新たな展開を見せる。

それにしても、伴蔵の女房のお峰が「自分の亭主が浮気しているのでは」と勘付いて、伴蔵の親戚で懇意にしている馬子の久蔵に酒を飲ませて、カマをかけて、伴蔵の浮気のはじまりから現在まで全てを喋らせてしまう。このお峰の話の引き出し方も実に巧みで、久蔵の間抜けっぷりが愉しかった。