古今亭志ん生没後50年追善興行 初日

新宿末廣亭九月中席初日昼の部に行きました。今席は古今亭志ん生没後50年追善興行。前半昼の部主任が五街道雲助師匠、夜の部主任が古今亭志ん彌師匠、後半昼の部主任が古今亭志ん輔師匠、夜の部主任が金原亭馬生師匠、出演者は全て古今亭・金原亭一門という特別な芝居だ。

ついでに言うと、先代金原亭馬生没後40年追善(正確には41年だが)、古今亭志ん朝二十三回忌追善、先代古今亭圓菊十三回忌追善でもある。そして、祝・五街道雲助人間国宝認定も兼ねている。

「他行」古今亭松ぼっくり/「ざるや」金原亭杏寿/「長屋の算術」桃月庵黒酒/「長短」古今亭菊之丞/「後生鰻」金原亭駒三/「熊の皮」桂やまと/漫才 笑組/「大隈家の一族」古今亭志ん雀/「権兵衛狸」金原亭馬の助/「お菊の皿」古今亭圓菊/中入り/座談会/「ろくろ首」桃月庵こはく/奇術 松旭斎美智・美登/「親子酒」古今亭菊春/「締め込み」古今亭菊太楼/ギター漫談 ペペ桜井/「幾代餅」五街道雲助

座談会のゲストは先代馬生の次女、美濃部由紀子さん。司会は由紀子さんの息子である金原亭小駒さん、古今亭志ん生の曾孫にあたる。これに雲助師匠、馬の助師匠、圓菊師匠が加わった。

高座には4枚の志ん生師匠のパネル写真が飾られていたが、これは最近NHKの企画でモノクロ写真をAIでカラー写真にしたもの。モノクロ写真の志ん生しか知らない圓菊師匠が、実際どうですか?と訊くと、雲助師匠も馬の助師匠も由紀子さんも、「だいたい、こんな感じですかね…でも、ちょっと綺麗すぎるかな」。

生前の志ん生師匠の記憶。医者と坊主が嫌いだった。仏壇の前で和尚さんが経文を唱えているのに、志ん生は仏壇の隣りのテレビの大相撲の方ばかり気にしていたとか。テレビアニメの「おそ松くん」が好きだったというのも、へぇー。食べ物は納豆が好きで、漬物は嫌い、沢庵も食べなかったと。

酒の飲み方も、志ん生と馬生の親子では対照的だった。志ん生は医者から一日の酒量をコップ半分と決められていて、そこに半分の水を入れて薄めて、それを一気に飲んだそう。一方、馬生は朝一番のビールにはじまり、一日中飲んでいた。親父とは反対でトロトロ飲むのが好き。外で飲むのを含めると、一日一升は飲んでいたのではないかと。

今回の特別興行の番頭を勤めているのが、菊之丞師匠。出演者を全員、古今亭・金原亭一門にするにあたって、色物も同様にした。だが、一門には色物が6組しかいない。笑組のゆたか先生いわく、「寄席一本に最低色物は4本は必要」なので、どうするの?と菊之丞師匠に訊いたら、「何とかします」。結果、昼に3組、夜に3組の顔付けとなった。

だが、噺家さんが全く手を抜かずに、しっかりとネタを演るので、すごく聴き応えがあったし、馬の助師匠は落語のほかに百面相、笑組は南京玉すだれを披露してくれて、寄席に彩りを加える工夫がなされているのがとても良かった。

この興行限定販売の「復刻版志ん生手拭い」も飛ぶように売れて、一日90本の用意だったそうだが、すっかり完売。座談会ゲストの美濃部由紀子さんの著書「志ん生が語るクオリティの高い貧乏のススメ」(講談社α新書)も、志ん生の生写真付きで販売したら、これまた完売していた。僕はどちらも購入したよ。

座談会のゲストは日替わりで、「いだてん」の宮藤官九郎さんや松尾スズキさん、森山未來さん、TBS落語研究会解説者でもおなじみの京須偕充さん、ご存知、中尾彬・池波志乃夫妻、俳優の東出昌大さんなど多彩!

僕はこの後は千秋楽の昼の部に伺う予定だ。京須さんのお話も楽しみ!

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