日本浪曲協会九月定席千秋楽、そして阿久鯉・伯山「畔倉重四郎」俥読み④
木馬亭で日本浪曲協会九月定席千秋楽を観ました。つくばエクスプレスの新御徒町の駅で、これから浅草演芸ホールに行かれる太田その師匠にお会いした。お互いにマスクを外した状態でお会いするのは久しぶりのこと。とても新鮮で爽やかな気持ちになった。
「一休の婿入り」東家一陽・東家美/「双葉山」東家三可子・東家美/「恨みの十四日」港家小そめ・玉川祐子/「天保水滸伝 平手の駆け付け」玉川奈々福・沢村まみ/中入り/「山の名刀」東家一太郎・東家美/「耳なし芳一」田辺いちか/「生きる悲哀」富士琴美・水乃金魚/「元禄瓦版」鳳舞衣子・佐藤貴美江
奈々福先生。大利根河原の大喧嘩で、300人の飯岡方に対し、80人しかいない笹川方がなぜ対等に戦えたのか。
飯岡方にいたことのある造り酒屋の留吉。その息子の留次郎は真面目一徹だったのだが、ある時を境に潮来の大黒屋のお久に夢中になり、店の金を使い込むようになった。恋仲になった二人が利根川で心中しようとしているところを、清滝佐吉に救われた。この佐吉が繁蔵の子分で、つまり留次郎は笹川方に恩義があった。飯岡方が笹川方を攻めるという情報が留次郎を通して、笹川方に伝わったわけだ。なるほど。
いちかさん。平家の怨霊を供養するために建立された阿弥陀寺に世話になっていた琵琶の名手、芳一は一体何者に請われて平家物語の壇ノ浦の段の弾き語りをしたのか。
和尚の命に従って寺男が見たのは、安徳天皇の墓の前で弾き語りをする芳一の姿だった。使者に七晩続けて語ってほしいと請われた芳一だが、和尚は「語り終えたら地獄に堕ちる」と諭す。怨霊を避けるために芳一の身体にくまなく般若心経を書いたが、両耳にだけは書いていなかった…。小泉八雲作品を巧みに読む技量に感服した。
夜は神田阿久鯉・神田伯山「畔倉重四郎」俥読みの四日目に行きました。連続物の醍醐味を存分に味わえることにきょうも感謝である。
第13話「おふみ重四郎白州の対決」神田阿久鯉
あくまでも穀屋平兵衛殺害を否認する重四郎の自信に満ちた顔が印象的だ。おふみの証言は全て出鱈目だと言う。言うに事欠いて、おふみは博奕にハマって、何度も金を借りに来て、それを断ったのを恨みに思ってそんな作り話をしているのだと言う。すごい。おふみの証言だけでは決定的な証拠に欠ける。さあ、どうなるのか。
第14話「白石の働き」神田伯山
新米の乞食・治平に化けて証拠探しをする白石治右衛門が良いなあ。ベテラン(?)の乞食、ズブ六と懇意となり、去年夏の鈴ヶ森の喧嘩について聞き出すところが興味深い。「さんご!」「じゅうし!」と言い争っていたということ。そして水死体が役人によって浄願寺に引き取られたことが判り、死体が持ってた煙草入れから「三五郎」という名前が書かれた質札が出て来たことで事態は進展する。
重四郎は「証拠があるなら出せ!」と息巻いているところに差し出された、質札とズブ六の「さんご!じゅうし!」の証言。これによって、重四郎は遂に牢へと入れられる。だが、これは三五郎殺しの立証であって、穀屋平兵衛殺害の罪はまだ藪の中である…。
第15話「奇妙院登場」神田阿久鯉
重四郎の貫禄なのだろう。伝馬町の牢獄で彼は牢名主に次ぐナンバー2である“隅の隠居”に収まる。そして、新しく囚人として入ってきた奇妙院晴山という五十過ぎの男に接近するのも流石だ。奇妙院は「狐が付いた」と言ってインチキな祈祷をして金を巻き上げるという犯罪で捕まったという。
遠島を逃れるためには「知らぬ存ぜぬ」を貫き通せとアドバイスし、痛め吟味になって弱った奇妙院に対し、医者に袖の下を渡すなどして手厚い看護を施すように手を廻す。そうやって奇妙院に恩を売ることで、重四郎は奇妙院を利用しようとしているのでは?と思わせる展開に。明日の続きが楽しみである。