三遊亭兼好「河童の手」(三遊亭白鳥作)、そして渋谷らくご 談吉イリュージョン

「三遊亭兼好 人形町噺し問屋」に行きました。「館林」と三遊亭白鳥作「河童の手」の二席。開口一番は五番弟子のげんきさんが「孝行糖」を演じ、これがしっかりしていて良かった。

兼好師匠が白鳥師匠の作品を演じるのを初めて聴いた。荒唐無稽な白鳥ワールドが、兼好師匠の手に掛かると、端正に整い、まるで古典落語を聴いているかのような錯覚に陥った。白鳥師匠の創作の才能に、兼好師匠の話芸の巧さが加わり、とても面白い高座になった。

廻船問屋の若旦那が吉原に狂い、湯水の如く店の金を使うので、番頭をはじめとする店の奉公人は労働意欲を失くし、信頼できないので暇をくれと言い出す始末。小僧の定吉が武田鉄矢キャラで若旦那を説教するところ、面白い。この危機的状況を回避しようと、何かと息子に甘い母親は「息子には商売人の才覚がある」と番頭にハッタリをかます。

価値のある品を安く仕入れ、それを高く売るのが商売人に才覚だと番頭が言うと、母親は「3両の元手で100両の価値のある物を3日で見つけて来させる」と請け合うが…。若旦那が持ってくるモノは、「歌麿の三大美人画」と言って高尾太夫、幾代太夫、毒蝮三太夫の絵だったり、三遊亭白鳥が演じた「柳田格之進」のCDは確かに「なかなか手に入らない」かもしれないが、価値のあるものではなかったり。うまくいくはずがない。

母親は最後の手段を打ってあった。新宝堂という骨董屋に予め100両を渡しておいて、若旦那が3両持って行くと、ちゃんと100両の価値のある品を売ってくれるという算段をつけていたのだ。だが、若旦那は店の名前を間違えて、珍宝堂に行ってしまう。

そして、その店の主人からゴミ同然の“河童の手”を若旦那は3両を出して買ってしまう。だが、ミイラ化した河童の手に生命が宿り、若旦那は空想の生き物だと思っていた河童と不思議な出会いをする…。

ストーリー自体は白鳥師匠お得意の荒唐無稽なのだけれど、これを兼好師匠が語り進めることによって、違和感や抵抗がなく物語の世界に入っていける、この不思議さよ。兼好師匠の話芸の素晴らしさに感嘆した高座だった。

配信で「渋谷らくご 談吉イリュージョン」を観ました。個性的な新作落語を生み出す若手二ツ目の立川談吉さんのほか、同じく個性では負けない先輩真打2人、後輩二ツ目1人が登場する、魅力的な落語会だった。

桂伸べえ「タコパ」

妄想系の良い意味でキモイ面白さを持つ伸べえさんが本領発揮。タコパとはたこ焼きパーティーのことなのか。若い人たちの出会いの場としては、“陶芸教室”と同じというフレーズに思わず笑った。もてる男はたこ焼きをひっくり返すのが早い。浪花の韋駄天ことサトシのテクニックに一目惚れしたサトミちゃんだが、生きているタコにキャサリンという名を付けて水槽で飼っているというのも面白い。あと、熱々のたこ焼きを冷たいコーラで流し込む快感、わかるような気がする。

春風亭百栄「七つのツボを押す男」

久しぶりに聴いたけど、色褪せない面白さ。80年代の少年ジャンプで輝いていたヒーローたちが、清水次郎長の石松三十石船みたいに次々と登場するのが可笑しい。北斗の拳のケンシロウが、自分の名前が出ずに苛々するところ、本当に石松みたい。ドラゴンボールの孫悟空、キン肉マン、聖闘士星矢、ドクタースランプの則巻アラレ、キャプテン翼の大空翼、こち亀の両津勘吉…。懐かしい。

林家きく麿「あるあるデイホーム」

デイホームで女性に囲まれて人気者だったヨシダさんが、世辞の上手いタケイの登場によってその地位を奪われるという…。もう一度、女性たちに取り巻かれたいと、笑いに磨きをかけ、あるあるネタと自虐ネタで攻めるところ、きく麿ワールド全開で大爆笑だ。ネタの間に挟む「冥途の土産に聞いておけ~」が何とも言えず面白い。

立川談吉「ゴメス」

マサオのエアドリフト走行から、もう談吉落語。江戸城無血開城したのは、欧陽菲菲、上野の銅像になっているという…。それで息子の学芸会の芝居が「ロミオとジュリエット」なんだが、主役は中日の4番、ゴメスで、彼が特大のホームランを打って終わるという…。大好きだ!

立川談吉「江戸犯罪西ノ森犯科帳~師匠殺しのサイゾー~」

これまた談吉ワールド!師匠だけを狙って殺すサイゾーは弟子は殺さない。絵師の蘭伯のところに田舎から弟子志願の勘助がやって来たが、サイゾーに殺されたくないから断る。ならば、弟子ではなく、見習いならいいだろうと熱心に口説かれ、入門を許すが…。三か月後、弟子に昇格した勘助はサイゾーを待ち伏せ、これまでに殺した師匠(納豆職人とか、小料理屋料理人とか)たちの弟子たちが集結して、サイゾーを亡き者にするという…素晴らしき発想に乾杯!