三匹が喋る!、そして落語の仮面第7話「短命からの脱出」

「三匹が喋る! 柳家喬太郎・柳家三三・三遊亭萬橘」に行きました。喬太郎師匠曰く、三遊亭萬橘と愉快な仲間たち(笑)。

三遊亭萬橘「次の御用日」

「あ゛ー」という奇声を小僧の常吉、臥煙の藤吉、お奉行様の三者が繰り返すお裁きのバカバカしさと、そしてお奉行様が声を枯らしてしまい、「続きは次の御用日で」というサゲが身上の噺だ。聴いているこちらも、「あ゛ー」と発したくなる面白さがある。

それにしても、藤吉がお嬢様を、「あ゛ー」と道端で襲ったのは、何が目的だったのだろう。お嬢様が記憶喪失になるほどだから、よほどショックを受けるような、怖さだったのだろう。犯罪に近い行為なので、藤吉の動機を知りたいというのは野暮だろうか。

柳家三三「締め込み」

風呂敷包みから自分の女房に男ができたに違いないと妄想を膨らまして怒る亭主もすごいが、ペラペラと無駄な情報を含めてお喋りが止まらない女房もすごい。似たもの夫婦の痴話喧嘩に入る泥棒先生も自分がその種を作ってしまった、つまりは泥棒に入った後ろめたさを感じながらも、この喧嘩を止めなくてはと仲裁に入る気持ちが良く判る。それにしても、三三師匠のおかみさんのお喋りには圧倒される。

柳家喬太郎「社食の恩返し」

何でもコスト削減が叫ばれて、企業の社員食堂なんてのも、昭和の遺物になってしまった。社食のおばちゃん、昔はいました。「リアルにおふくろの味」というのが可笑しい。“微妙な”美味しさが、またいいんじゃないでしょうか。

北海道の特産品とかグルメとかが色々出てくるのも愉しい。焼きそば弁当、ちくわパン、エゾシカの肉、ワカサギ、ヒメマス。さすがにマリモは食べないでしょう(笑)。普段料理などしない若手社員二人が必死に社食のおばちゃんを労う気持ちが伝わってきて、聴いているこちらも笑顔になった。

配信で「弁財亭和泉の挑戦!落語の仮面全10話」を観ました。今回は第7話「短命からの脱出」だ。

桜の谷でタイムスリップして、あや姫様に出会い、桜の精の気持ちが判った三遊亭花は師匠の月影先生のところに戻る。落語を演りたいが、まだスキャンダルを引きずっているから寄席や普通の落語会には出られない、大きな話題を作らなくてはいけない、野外ステージで独演会を開きなさいと命じられる。

権爺に相談し、練馬の石神井公園を会場にすることに決め、そこでステージを駆け回ったり、木から木へ飛び回ったりするような、新しい落語を創造すると意気込む花に対し、月影先生はそれに対応できる体力をつける必要があると言い、地獄の特訓がはじまる。反対俥をやりながらグランドを全速力で10周、山手通りを野ざらしの唄を歌いながら10キロランニング、橋の欄干でかっぽれを踊る等々。

そして、花は石神井公園の三日間連続独演会を「真夏の夜の夢」と題し、怪談噺を掛けることにする。そして初日を迎える。

伊勢屋のお婿さんがまた死んだ。これで3人目。落ち込んでいるだろうお嬢様を励ましに、農家の娘のおみつが野菜を担いで出かける。お嬢様は気晴らしに森の中にある別宅に行こうと、おみつを誘い、温泉に浸かり、酒をご馳走になる。

そこで、お嬢様は本性を顕した。吸血鬼カーミュラーだったのだ。人の生き血を吸って生きている、800歳というカーミュラーは、自分の婿も生き血を吸って殺してしまったのだ。そして、おみつとは友達になりたい、お前も吸血鬼になっておくれと言う。

身の危険を感じたおみつは森の中を走って逃げる。足元には骸骨が沢山。皆、カーミュラーの犠牲になった人間たちだ。おみつは野ざらしの唄を歌いながら逃げる。木と木の間を飛び回り、まるでサーカスのよう。追いかけるカーミュラーは、祝いの舞いと言ってかっぽれを踊る。

最後はおみつが人参と大根を十字架にして、ニンニクを投げつけ、吸血鬼カーミュラーを退散。何とか無事に帰還することができた。

この従来の落語の概念を打ち破る花のパフォーマンスに、観客は手拍子で喝采を送り、大歓声に包まれる。そして、この野外独演会が絶賛され、千秋楽には3000人が訪れるほどの評判に。これまで花のスキャンダルを流していたマスコミが掌を返したように、この独演会を褒め讃え、「奇跡の復活」「ボヘミアン落語」と見出しが躍ったという…。

三遊亭花は落語家として、見事な復活を遂げ、この先どのような展開になるのか。ますます第8話以降が楽しみになった。