銀座でビックショー

「銀座でビックショー」に行きました。ビックショー25周年記念だ。中入り後、喬太郎師匠が高座を終えると、緞帳が下がり、その前で遠峰あこ先生がアコーディオン演奏で「わたしの京浜東北線」などを唄い、その間に舞台転換。緞帳が上がると、寒空はだか先生のスタンダップコメディ、中トロドン!や東京タワーの歌で盛り上がる。そして、遠峰あこ先生が袖から再び登場してのコラボ。色物さん二人がトリを取る、おめでたい企画に拍手喝采だった。

「粗忽長屋」柳家小ふね/「ちりとてちん」桂宮治/「佃祭」柳亭市馬/中入り/「えーっとここは」柳家喬太郎/唄うアコーディオン弾き 遠峰あこ/スタンダップコメディ 寒空はだか/あこ&はだか

市馬師匠、情けは人の為ならず、本寸法の話芸を見せてくれた。身投げを救った次郎兵衛さんを“吾妻橋の旦那”と毎日のように拝んでいた佃島の夫婦。うちのかみさんが助けたんじゃない、お天道様が助けたんだという金太郎の言葉が沁みる。

次郎兵衛さんが亡くなったと思い込み、通夜を始めた長屋の衆。悔やみのはずが、仲人になって貰って一緒になった女房が吉原の朝帰りを一晩寝られずに待っていたという惚気になってしまうのが愉しい。

次郎兵衛さんの女房も、「住吉様が白粉付けて待っているんでしょう」と嫌味たっぷりに送り出したという悋気ゆえ、次郎兵衛さんが無事に帰って来たというのに、佃島のおかみさんと差し迎えで飲んでいたと聞き、焼き餅を妬くというのが可笑しい。遺体を引き取りに行く長屋の衆に目印を訊かれ、左の二の腕に「たま命」と彫ってあるという…次郎兵衛さんの女房への愛情があればこその悋気というのがこの噺の身上だと思う。

喬太郎師匠、SWAでのネタ卸しから何度も掛けていくうちに、ブラッシュアップされているのが嬉しい。馴染みの商店街なのに、新しく出来たカフェの前はなんだったんだろう?と思い出せない、あるある。

オムライス屋じゃなかったか?蕎麦屋じゃなかったか?と上司と部下があれこれイメージを語り合っている、二人の価値観の相違も愉しいし、それに対応して“サービス”を提供する謎の店主も可笑しい。最後にはライ麦畑が広がったりして…白昼夢でも見たかのようなミステリーになっているのが素敵だ。

あこ先生とはだか先生のコラボ。一曲目は♬茶目子の一日。大正8年にレコードが発売されたそうだが、レトロな感じがあこ先生のアコーディオンにも合っていて良い。二曲目はザ・ブルーハーツの♬人にやさしく。昭和62年、メジャーデビューする前の自主製作盤の時代の曲。心に沁みる歌詞をはだか先生が丁寧に歌っているのが印象的だった。そして三曲目は♬東京バカ踊り。昭和31年に日活が同名の映画を公開したときに、岡晴夫さんと島倉千代子さんが歌った曲。3曲全体を通して、どことなくノスタルジックな気分に浸れる演奏だった。