いちにさんざ 柳家三三・桂二葉・春風亭一花

演芸写真家 橘蓮二プロデュース“極”vol.14「いちにさんざ」に行きました。春風亭一花さん、桂二葉さん、柳家三三師匠の三人会だ。

「新聞記事」桂伸ぴん/「不動坊」春風亭一花/「天狗さし」桂二葉/中入り/「不孝者」柳家三三

一花さん、良い味が出てきた。大家からおたきさんとの縁談を持ち込まれた吉公の「3年前から不動坊に貸していた。本当は自分の女房だったのだ」という思い込みが愉しい。そのまま湯に行って、その浮かれっぷりを観たかったが、そこは残念ながらカットされ、いきなり三人組集合になったのは惜しい。

徳さん、鉄さん、万さんは「おたきさん同好会」の会員番号1番から3番になっていて、「吉公は12番のくせに」と怒りが収まらないのが可笑しい。中でも、「折角だから」を繰り返す万さんのキャラクターが面白い。折角だから隣町の美味しい餡を食べてもらいたかった、折角だから太鼓だけでなくてチンドン屋の格好をしてきた、何か可愛いよね。

二葉さんの喜六のアホぶりが実に痛快で楽しい。ありきたりのすき焼き屋じゃ儲からないから、天狗のすき焼きを食べて貰えばいいという発想自体が堪らなく可笑しい上に、それをもっともらしく相談する喜六が可愛い。どこで仕入れたらいいのか、天狗の本場はどこだろうか、天狗を捌く職人を…いや、天狗裁きじゃないですよ、違う落語になっちゃう!

それで本場の鞍馬に行ったら、奥の院の坊さんが行を終えて、外に出てくるところ、扉がギィーと開く音が“天狗の鳴き声”だなんて、笑っちゃう!天狗を捕まえたと思い込み、必死に坊さんをグルグル巻きに縛って運ぶところ、二葉さんの熱演で大爆笑だ。

三三師匠、芸の艶。大旦那が昔面倒を見ていた芸者・金哉との思わぬ再会。今はどこの旦那に世話になっているんだ?という質問に、「わたしはあなたという旦那に捨てられたんじゃないですか!」と言われてたじろぐ大旦那が必死に謝る姿に誠意があるのがいい。

ある借金の請け人になったばかりに店が傾きそうになった、その再建のためとはいえ、人を介して直に説明もせずに手切れ金を渡して別れたことに対し、本当にすまなかったと思っている大旦那の気持ちが沁みる。

今もまだお互いに憎からず思っていることが判り、もう一度ヨリを戻してやり直そうと、目と目が合って、手と手が重なって、いい雰囲気になったところで…。この親不孝者め!が効いてくる。