渋谷道玄坂寄席 春風亭一之輔独演会

「渋谷道玄坂寄席 春風亭一之輔独演会」に行きました。「浮世床~将棋・本」「蝦蟇の油」「猫の災難」の三席。

中入り前の二席はまさに自由演技で、一之輔カラー満載の愉しい高座だった。「浮世床」は「私は貝になりたい」でサゲるのは昔からのパターンだけど、源ちゃんが読む「太閤記」(てーこーき)が抜群に面白い。モールス信号で打電したり、ラジオ部品の単位オームが出てきたり、正しい青少年の育て方を考えるPHPが登場したり…。

「蝦蟇の油」も前半の口上の見事さ、そしてそこから大幅に脱線した酔っ払いの露天商の暴走ぶりに大爆笑!主成分はカエルの汗で、そのカエルはマザー牧場が麓にある鋸山から取る?!

「猫の災難」は主人公がご機嫌な酔っ払いとなったところからが可愛くて、楽しい。兄貴分が買ってきた一升瓶と会話する。見るなよ!まあ、兄貴も毒見したから一杯位いいか。美味いな!もっと味わって飲め?わかったよ!と二杯目。

それでもって、兄貴は一合上戸だからと瓶の口から徳利の口へ流し込もうとするが、案の定失敗して、畳に溢す。必死に畳を押して、「しっかりしてください!」と人命救助するかのような形で、零れた酒を吸う様子が実に可笑しい。

途中、酒呑みらしいなあと思うフレーズも良い。兄貴遅いな、肴なんかいらないのに、俺は塩でも飲める。いや、指の塩っ気で飲める。この人差し指には色々な味が沁み込んでいる、と言って指をしゃぶりながら飲むのが最高だ。

とうとう全部飲み切ってしまって、さあどうしよう。おかしな言い訳を考えるのも、面白い。天井裏から酒吞童子が出てきて、俺はお前が越してくる前から住んでいるんだと言って、口から管が出てきて、一升瓶の酒を一気に吸い込んでしまったという…。蝶が蜜を吸うストローみたいなやつで、飲み終わると、伸びていた管がクルクルと巻かれて元に戻る、そんな漫画みたいな絵が浮かぶ楽しさが一之輔落語にはある。