玉川太福「任侠流れの豚次伝」第3話・第4話

玉川太福木馬亭月例独演会に行きました。先月からスタートした、三遊亭白鳥作「任侠流れの豚次伝」の浪曲版全10話、5ケ月連続口演の第2回だ。第3話と第4話を聴いた。

第3話「流山の決闘」

舞台は千葉・流山動物園。1日平均2人の来場しかないために、「千葉はディズニーランドがあればいい」と補助金がカットされて、餌代も確保できない有り様だ。動物といっても、ウシの牛太郎、ニワトリのチャボ子、そしてブタの豚次しかいないから、人気がないのも当たり前だが。そう、豚次は上野動物園を出て行った後、ここに引き取って貰っていた。

実はもう一頭、象の政五郎がいるのだが、今は姿を見せていない。というのも、動物園の餌代のために牙をハンコ21に売却してしまったのだ。園長に人気回復策を相談された豚次は、上野動物園のパンダ親分に助っ人に入ってもらい、集客しようと考え、古巣の上野動物園を訪ねた。

パンダ親分は「覚悟を見せろ」と言って、虎男に豚次の尻を齧らせる。豚次もこれで助っ人に来てくれるのならと我慢したが、「そんな約束はしていない」とパンダ親分に裏切られ、上野公園に放り出されて、野宿のプロフェッショナルの餌食に…。

寸でのところで、流山から駆けつけた牛太郎に救出され、流山に戻る。豚次は3日間の昏睡状態から覚め、意識を回復した。そして、人気回復策を思いつく。人間の言葉を覚えれば、お客さんに喜ばれるのではないか。園長はドリトル先生の末裔なので、彼から言葉を教わり、お客さんから餌を貰うと「ありがとう」と虎造節で御礼を言えるようになった。その動画をSNSにアップすると、バズって、来場者は急増した。

一方、年間300万人を誇っていた上野動物園は、その煽りを食らって、人気が大幅にダウンした。パンダ親分が飲んでいたドンペリも、第3のビールに差し替えられた。流山を憎んだパンダ親分は虎男を連れて、流山動物園に殴り込みをかける。

迎え撃ったのは、象の政五郎。実はゴリ長親分の一番の弟子が、エレファントのマサ、政五郎本人だったのだ。虎男を蹴倒し、パンダを殴って、遠く中国四川省まで飛ばしてしまうという、圧倒的勝利を勝ち取った。

第4話「雨のベルサイユ」

激しい決闘のために、象の政五郎は病床に。豚次を呼んで、自分の牙をゴリ長親分の墓のある四国の金毘羅様に納めてほしいと願う。それを遺言に政五郎は天国に召された。

豚次は金毘羅を目指す。遠州掛川に差し掛かったところで、猿のサルゾウに呼び止められる。ネコ缶を運んでいる容疑をかけられたのだ。疑いは晴れ、ラビット一家のウサ吉親分が事情を話す。

掛川の市長はフランスかぶれで、動物園にベルサイユという名前を付け、ルイ16世が愛玩した猫の末裔であるマリーという雌猫を高い値段で購入し、そのマリーが動物園を牛耳っている。美食家のマリーは高級なネコ缶を食べるため、他の動物たちは辛い思いをさせられている。そのため、ウサ吉親分たちは兵糧攻めとしてネコ缶を運搬している動物を見つけて、マリーの元に運ばれるのを止めているのだ。

だが、マリーとその用心棒のレッサーパンダの小次郎から、ウサ吉の孫娘のミッフィーを誘拐した、助けてほしければ、ネコ缶45個を持ってこいという脅迫状が送られてきた。

弱い者いじめが嫌いな任侠の男、豚次はミッフィー救出の役を買って出る。そして、マリーのいる動物園へ。用心棒のレッサーパンダの小次郎と対峙することになるが、そのとき、小次郎はその豚が豚次であることが判り、闘いの手を緩めてしまう。マリーが構わずに弓矢を豚次に放つと、小次郎が盾になって豚次を守った。

一体、どういうこと?と戸惑う豚次。小次郎はマリーを逃がす。降る雨に濡れた小次郎の茶色の身体が段々に薄くなっていく。そして、小次郎はレッサーパンダではなく、アライグマだったことが判明する。「豚次さん、私は上野動物園でお世話になったラスカルの娘、オスカルです」。病気の母とともに南へ下ったとき、助けてくれたのが掛川のマリーだった。母は死んで、自分は掛川市長からレッサーパンダになれと言われ、絵の具を塗って、雄のレッサーパンダに身をやつしていたというのだ。

だけれども、豚次さんに助けてもらった恩義は忘れない、命を賭けて恩返しをしろと母からも言われている、だから豚次さんを守ったのだと。密かに、あの頃からオスカルは豚次を慕っていて、渾名で「アンドレ」と呼んでいた。今、豚次の腕に抱かれたオスカルは初めて本人の前で「アンドレ!」と呼ぶ。そして、豚次も「オスカル!」と呼ぶ。豚次のラードを血止めにして、オスカルを強く抱きしめる豚次だった。