日本浪曲協会6月定席二日目、そして春風亭一之輔のドッサりまわるぜ

日本浪曲協会6月定席二日目に行きました。朝から雨。翁そばではカレー南蛮大盛りを頼んで、ガッツリと昼食を済ませ、木馬亭へ。

「深川裸祭りの由来」港家柳一・佐藤一貴/「歌川国芳一門 黒猫異聞」東家三可子・旭ちぐさ/「水戸黄門漫遊記 散財競争」国本はる乃・広沢美舟/「忠治八百屋」港家小柳丸・佐藤貴美江/中入り/「キムラのピアノ」港家小ゆき・沢村理緒/「柳沢昇進録 浅妻船」神田鯉花/「夢二の女」澤順子・佐藤貴美江/「忠僕直助」天中軒雲月・広沢美舟

きょうは雲月先生の渾身の高座に尽きるだろう。大熱演。大野黒兵衛に刀のことで馬鹿にされた岡島八十右衛門。それを知った家来の直助は主人の岡島の恥辱を晴らしてあげようと大坂で刀鍛冶の修行を積むという意気がすごい。

でも雲月先生の浪曲はその修行時代に焦点を当てるのではなく、直助が免許皆伝し、津田近江守助直となって赤穂に戻って来て、「あの恥辱」を晴らすところを丹念に描いているところが素晴らしい。

岡島に立派な刀を渡すだけでなく、大野の発注依頼に対して、「千両なら引き受ける」と言い放ち、直助が近頃名人と誉れ高い助直本人だということを知らしめて、鼻を明かすところ、実に気持ちが良かった。

夜は亀有に移動して、「らくご DE 全国ツアー VOL.11 春風亭一之輔のドッサりまわるぜ 2023」に行きました。27公演の初日である。これから全国各地を廻り、10月27日のなかのゼロ大ホールでファイナルを迎える。きょうは「団子屋政談」と「笠碁」の二席。

「笠碁」、友情っていいなあと思う。タケちゃんもロクちゃんも、もはや大旦那で、店は任せきりという、ほぼ隠居な身分だから、還暦は過ぎているでしょう。その二人は8歳のときにも一緒に空き地で遊んでいた。タケちゃんが犬を追い回して行ってしまったのを、戻ってくるまでロクちゃんが雨の中、ずぶ濡れになりながら待っていてあげた。そういう昔の思い出を語り合える友がいることが、すごく羨ましい。

幼なじみが、還暦過ぎて、共通の趣味である碁で一手待ってくれ、待てない、で痴話喧嘩する。それって、本当に羨ましすぎますよ。たった一回の「待った」をめぐって、5年前に借金を貸した、返すのが遅れた、待ってあげた。可愛いじゃないですか。ましてや、8歳のときの空き地で遊んだ思い出まで覚えている。こんな仲良しがいる老後の暮らし、素敵すぎます。

「団子屋政談」。ものすごく丁寧というか、大人びた、理屈では父親を完全に凌駕している金坊をこれでもか!という位に独自のギャグで笑い沢山に描いた「初天神」が聴けた。それだけでも満腹なのに、その後、デリシャスなデザートとコーヒーが付いてきたお得感満載の高座だった。

団子屋が「二度漬け、三度漬けは迷惑だ!それも毎年!お奉行様に訴えてやる!」となった騒動に、「やった!遠島だ!」とワクワクした金坊だが、大岡越前守は「このようなことは二度とするな」とあっさりしたお裁きだったので、金坊は納得がいかないという…。やはり金坊のキャラクター設定が「初天神」の延長線上にあって面白い。

なぜか「暴れん坊将軍」のテーマに乗って登場した大岡越前守が、金坊と天神様のお参りに行くことになるが…。大岡様を一目見ようという群衆の晒し者になっちゃうし、天神様初体験の大岡様は飴屋や団子屋に100両、200両といった大金を惜しげもなく払って、店ごと買収しちゃうし、金坊はこれじゃあ、全く面白くない。

最後は「お父っあんと来る方が楽しいよお」と降参してしまい、「よその子に産まれれば良かった」などとは以後言わないようにと大岡様に諭されて大団円。小生意気に思えた金坊も、やっぱり無邪気な子供らしいところがあるじゃないか!という味付けにするところが、一之輔師匠の上手さだと思う。