春風亭一之輔独演会、そして大相撲夏場所中日
三鷹市公会堂で「春風亭一之輔独演会」を観ました。「もぐら泥」「あくび指南」「お見立て」の三席。これが終演してから、鈴本、浅草と出番があるという。笑点メンバーになっても、きちんと寄席を大切にする姿勢が素晴らしい。
「もぐら泥」は師匠では初めて聴いた。穴を掘って手首を家の中に入れ、指が錠前に僅かに届かない泥棒先生。家の中で算盤を弾いて、家計のやりくりがつかない亭主。両者ともに「合わないんだよなあ。もう少しなのになあ」と呟いているところに、この噺の妙味がある。そこのところを実にユーモラスに描いて、面白い。
泥棒先生の犯行が亭主に見つかって、細引きで腕を縛り上げられてしまうと、泥棒先生は通りがかりの男に懐の財布から匕首を出してくれと頼むが…。少し冷静に考えれば、財布の中身だけ持っていかれることぐらい判りそうなもの。終始間抜けな泥棒先生を笑うのが、落語の魅力だ。
「あくび指南」はお馴染みの噺。指南所の師匠が女性だと思い込み、「大工です。家建ててます」と気取るところが、相変わらず可笑しい。でも、夏のあくびの手本を見せてもらって、その風流を理解し、「これだよ!俺が求めていたものは!」と開眼する八五郎は流石である。
デン!というきっかけを言わないと、決まり文句が言えない八五郎も愉しいが、何度も教えているうちに、師匠の方までデン!と言ってしまう、その伝染力が面白い。
「お見立て」の喜助が良いなあ。喜瀬川に「入院したことにしてくれ」「死んだことにしてくれ」「お墓参りに行って来い」と何度も我儘を無茶振りされるのは、役目の上で仕方ないのかもしれない。だけど、喜助は子どもの頃は級長で、末は博士か大臣かと言われた優秀な人物だったプライドを忘れていないのが素敵だ。
あとは、杢兵衛大尽の訛りの面白さ。喜助がケスケ、入院がヌウイン、見舞いがミメイまではいいけれど、「ヒーフになる約束をストカラニッチ」「手紙を書いてくれたらヨカンベッチーノ」になると、方言でなくてロシア語?と思ってしまう楽しさがある。ウラウラベッカンコ?ジャングル黒べえ?に大爆笑!
大相撲夏場所は中日八日目。4場所連続休場明けの横綱・照ノ富士が琴勝峰を万全の体勢から寄り切り、無傷の8連勝で勝ち越しを決めた。同じく全勝だった平幕の朝乃山は北青鵬に、明生は平戸海に敗れたため、照ノ富士が優勝争いの単独トップに立った。照ノ富士は場所が進むに連れ、安定感のある相撲を取り戻しつつあり、今後もこの一人横綱を中心に賜杯の行方が決まりそうだ。
関脇の大栄翔、若元春が2敗目を喫し、同じく関脇の豊昇龍、霧馬山とともに優勝争いは2差で追う展開となった。この4人は勢いがあるし、ましてや霧馬山、さらに大栄翔は大関獲りのチャンスもあるだけに、今後組まれるであろう照ノ富士との対戦に注目が集まる。
カド番の大関・貴景勝も6勝2敗で前半戦を折り返した。ケガがどのような状態か分からないが、今の相撲内容を見る限り、大関陥落からは逃れそうだ。もしかすると、優勝争いのキーマンになるかもしれない。
朝乃山も1敗は喫したが、元大関であり実力のある力士だ。勝ち星を重ねていけば、後半戦で役力士との対戦も組まれる可能性は大きい。貴景勝同様に、カギを握る力士として期待したい。
十両では、落合が土つかずの勝ち越しを決めた。今場所の成績次第では、初土俵から3場所で新入幕という快挙も達成される可能性が十分にある。東十両筆頭の豪ノ山も8戦全勝。十両の優勝争いもまた面白い。