浪曲かるた亭、そして大相撲初場所十三日目

浪曲かるた亭に行きました。東家千春、天中軒すみれ、富士綾那。期待の若手女流浪曲師３人の出演とあって、客席はいつにない活気に満ちていた。3人とも、伸びやかな声がとても心地良い。音程に違和感もない。一声、二節、三啖呵。浪曲の魅力をたっぷりと堪能した。

トップバッターは東家千春で「荒神山の喧嘩」。曲師は馬越ノリ子。清水次郎長伝の中の、賭場をめぐる神戸長吉（かんべ・ながきち）と穴太徳（あのうとく）の争いだが、きょうの高座はその前段階の話。長吉の子分と穴太徳の子分が女をめぐって諍いになったのをきっかけに、穴太徳と子分たちが長吉の家を襲うが、長吉は留守で、長吉の母親お島一人。穴太徳たちは家を滅茶苦茶に叩き壊すが、お島はたじろぐことなく、追い返す。その一歩も引かない気丈な姿が印象に残った。

天中軒すみれは「琴の爪」。真山青果の「元禄忠臣蔵　大石最後の一日」を芦川淳平が浪曲化したものだ。赤穂義士の磯貝十郎左衛門と妻おみのの二人の愛に心打たれる。討ち入りのために偽装した婚約ではなく、十郎左衛門とおみのの間に本当の愛があったことが素晴らしい。大石内蔵助を中心に、仇討本懐のために数々の偽装工作をしてきたが、おみのから渡された琴の爪を十郎左衛門が肌身離さず持っていたことが、この二人の愛の証だ。

富士綾那は「ゆうれい奇談」。曲師の沢村博喜が創作した浪曲だそうだ。ある夫婦が拾ったしゃれこうべを供養すると、晩になってその幽霊となった男が現れる。男が言うには、品川にある大店だった実家を飛び出したが、その実家が悪党に脅されて経営が危なくなっているという噂を聞いた、助けてほしいと。その夫婦はしゃれこうべを携えて、品川の男の実家に乗り込むと…。男の幽霊が大活躍して、悪党を退散。そして、夫婦は実家の養子となり商売を引継ぎ、大繁盛というハッピーエンドが愉しい。

さて、きょうは大相撲初場所十三日目。十日目まで１敗で単独トップだった大関・貴景勝がまさかの連敗を喫し、逆に平幕の阿武咲が2敗でトップに立った。そして、きょうの結びの一番は貴景勝―阿武咲が組まれ、どうなることか…とテレビ観戦していたら、貴景勝が大関の意地を見せて、阿武咲を押し出し、３敗で並んだ。同じく３敗だった平幕の琴勝峰が阿炎に突き落としで勝ち、優勝争いはこの3人を軸に明日、明後日の結果で決まる。

明日、貴景勝は関脇・豊昇龍、阿武咲は小結・霧馬山、琴勝峰が前頭筆頭・大栄翔と対戦する。霧馬山や大栄翔は4敗だから、明日勝つと自分にも優勝のチャンスが回って来るだけに目が離せない。

豊昇龍が左足首を痛めて、昨日今日と思うような相撲が取れずに連敗しているだけに、貴景勝が頭一つ有利に見えるが、まだ分からない。先場所まで３場所連続で平幕が優勝しており、まだまだこの混戦状態が続く大相撲は面白い。