「東京人」2月号は「もっと知りたい!講談」
「東京人」2月号の「特集 もっと知りたい!講談」を読みました。明治以来の講談ブーム到来!?いざ、豊潤な物語の世界へ、と表紙の売り文句にもあるように、講談の魅力に最近はまり出した僕のような人間にとっては、とても為になる特集だった。まだ全部を読み切っていないが、気軽に読めるところから読んでみた。
神田愛山先生と柳家喬太郎師匠の対談。お二人が二人会を始めた(2002年)のは、共通の知り合いが「愛山さんと喬太郎さんは似ている」と言ったのがきっかけというのが面白い。愛山先生は喬太郎師匠の「棄て犬」を例に挙げて、「同じ匂い」がすると。愛山先生の新作講談もアルコール依存症が主人公ですものね。愛山先生は喬太郎師匠に落語で演じてほしい講談の読み物を幾つか提示していて、それが実現するのが楽しみになった。
宝井琴桜先生のインタビュー。聞き手は神田織音先生。「コトザクラじゃありません、キンオウです」の琴桜先生は講談で初めて女性で真打になった方。1975年。それまでの苦労と、それからの研鑽をお話しになっていて興味深い。今、女流講釈師が東京に47人いるそうだが、その先鞭をつけた功績は大きい。また、女性ならではの視点で創作した「瓜生岩子伝」「日本女医誕生記」「平塚らいてう伝」など、大変に意義がある。
歌舞伎俳優の尾上松緑丈の講談への思いを生島淳氏がまとめた文章も興味深い。昨年の「荒川十太夫」の歌舞伎化について、「この作品は元来が名作でありまして、自分自身の手柄は一切ございません」としている、この謙虚さが素晴らしい。そして、歌舞伎と講談の親和性について触れているのが良いなあ。講談を聴きながら、いつも「これは歌舞伎にするとどうなるか」を常に考えているとか。「天保水滸伝」「国定忠治」「慶安太平記」…、ワクワク!
玉川太福先生の講談についての文章。木馬亭の定席は浪曲七席に加えて、講談が一席が入っている意味の大きさを知る。浪曲という話芸は、どれだけ講談からネタを頂いているか。その感謝の意味と意義。元来マクラがない浪曲だが、マクラを積極的に勉強しようとしていた、師匠福太郎の思いに胸が熱くなる。そして福太郎急逝について、マクラで思い出を話した琴調先生。講談と浪曲の関係性をこれからも深めていってほしいと思った。
一龍斎貞鏡さんへのインタビュー。聞き手は瀧口雅仁氏。実父が八代目貞山。祖父が七代目貞山。義祖父が六代目神田伯龍。でも、貞鏡さんは二十歳になるまで、お父さんの生の高座を聴いたことがなかったそうだ。その高座で衝撃を受け、入門。もっともっと教えてもらいたいことが沢山あっただろうに。だが、師匠貞山は一昨年に急逝してしまった。日本語がとても綺麗な高座は血筋。令和4年度の文化庁芸術祭新人賞を受賞した。今年秋に真打に昇進、ますます楽しみである。
最近講談を聴き始めた人は勿論、講談に興味を持って、これから聴いてみようという方にも必読の「東京人」2月号である。