バレ噺~令和から先の世にも遺してほしい文化

神保町かるた亭に行きました。落語芸術協会では、今年5月1日から新しい真打が3人誕生する。春風亭吉好、柳亭明楽、そして、桂翔丸だ。その翔丸さんが、春風亭昇也師匠が毎月ゲストを招いている神保町かるた亭に出演した。2009年に桂幸丸に入門して翔丸、2013年に二ツ目に昇進、そしてこの度の真打昇進と、前座名前のままなのも珍しい。と思ったら、一緒に昇進する吉好さん、明楽さんも揃って前座名のままの真打昇進なので驚いた。

それは兎も角として、この落語会の司会を勤めている演芸評論家の長井好弘さんが、冒頭の挨拶で「お正月っぽいことでも」と言って、バレ噺(破礼と書いて、バレと読む)について話をした。志ん生師匠が好んで演った「鈴振り」や「氏子中」などについて解説。どこが正月っぽいのか、分からないけど(笑)、面白かった。普段はお座敷などで演るものだが、「鈴振り」などは東横落語会の録音が残っているという。何かハプニングがあったのだろうと推測していた。

僕がCDで持っているのは、三代目三遊亭金馬のポニーキャニオンから出ている名演集の(八)で、「艶笑小噺総まくり」とタイトルにあるが、ライブ録音である。現代では、ホール落語会はもちろん、寄席でも滅多に聴けない内容だ。

去年11月に文春落語オンラインで、柳家喬太郎師匠が「R18」と銘打って、艶笑小咄を披露したのは記憶に新しい。雷弁当、漁師夫婦、質入張形、休息致せ、大根舟。このタイトルだけで内容が判る人はかなりの演芸通だ。この日は仲入りを挟んで「吉田御殿」を演じていたが、コンプライアンスが五月蠅い現代では、そうそう度量のあるメディアは現れないだろう。

話が横道に逸れたが、長井さんの後に高座に上がった昇也師匠も、翔丸さんも艶笑小咄を幾つかマクラで披露した。翔丸さんの大師匠にあたる桂米丸師匠からの紹介で、長野県の某落語会では、落語会そのものではなく、打ち上げの席でバレ噺を演ってほしいというリクエストが毎回あって、本で覚えて勉強したのだという。

こういう文化というのは昭和から平成、令和、その先の世になっても、遺してもらいたいと思うのは、時代遅れのオッサンの戯言だろうか。