3年ぶりの新春浅草歌舞伎

「新春浅草歌舞伎」第1部・第2部に行きました。3年ぶりの復活である。昭和55年に「初春花形歌舞伎」としてスタートして以来、若手花形俳優陣による奮闘の場として公演を重ねてきた。しかしながら、コロナ禍の影響で令和2年の公演を最後に開催が見送られてきた。図らずもこの期間に浅草公会堂の大規模改修工事が施工され、劇場施設とともに再出発ということになった。天保年間以降、幕府公認の江戸三座と呼ばれる芝居小屋が立ち並んでいた浅草の街にとって、新春の賑わいが戻ってきたことは喜ばしい限りである。

第1部

「双蝶々曲輪日記 引窓」

南与兵衛後に南方十次兵衛:中村隼人 濡髪長五郎:中村橋之助 女房お早:坂東新悟 母お幸:上村吉弥

与兵衛、お早、お幸、長五郎。4人がそれぞれに、自分を犠牲にしてでも、相手に幸せになってもらいたいと願うというのが、素晴らしい。

与兵衛は母の気持ちを察して、長五郎を見逃そうとする。長五郎は与兵衛のために縄にかかろうとする。母お幸は義子(与兵衛)への義理と実子(長五郎)への愛情との間で揺れ動く。そして、義母に寄り添うお早の優しさ。

義理と人情との狭間で互いを思いやる家族の美しい姿がそこにあった。

「男女道成寺」

白拍子桜子実は狂言師左近:坂東巳之助 白拍子花子:坂東新悟

第2部

「傾城反魂香 土佐将監閑居の場」

浮世又平後に土佐又平光起:中村歌昇 女房おとく:中村種之助 土佐修理之助:中村苔玉 土佐将監光信:中村吉之丞 将監北の方:中村歌女之丞 狩野雅楽之助:尾上松也

夫婦の堅い絆と深い愛を歌昇・種之助兄弟がしっかりと描いた。特に吃りの絵師・又平を献身的に支える女房おとくの愛情が沁みた。

土佐の苗字を許してもらいたい。夫の気持ちを必死に代弁するおとくの姿は、夫の吃音ゆえに寡黙な様子とは対照的に、これでもか!というくらいに喋る、喋る。だが、願いは叶わず、二人は死を覚悟する。

そのとき起こった奇跡!又平が精魂こめて手水鉢に描いた自画像が石を抜ける。これを確かめた又平夫婦の驚き。これによって、苗字帯刀が許され、吃りさえも治ってしまう場面は喜びに溢れている。

ハンディや身分の違いを超えて、絶望から歓喜へと変わる夫婦の様子が感動的だ。

「連獅子」

狂言師右近後に親獅子の精:尾上松也 狂言師左近後に仔獅子の精:中村苔玉 法華の僧蓮念:中村種之助 浄土の僧遍念:中村歌昇