【アナザーストーリーズ】戦後最大のヒーロー・力道山 知られざる真実(6)

NHK総合の録画で「アナザーストーリーズ 戦後最大のヒーロー・力道山 知られざる真実」を観ました。

きのうのつづき

その頃、力道山の故郷では朝鮮戦争が勃発。南北に別れて同じ民族が戦っていた。3年にわたる熾烈な戦闘を経て休戦協定が結ばれたが、朝鮮半島は38度線で分断され、多くの人々が引き裂かれた。

朝鮮戦争の最中、力道山は日本人、百田光浩の名の国籍を新たに作って受理されている。力道山の出自を取材したノンフィクションライターのリ・スニルは言う。

彼の場合、日本で生きざるを得なかった。もう故郷が戦禍ですし、電話どころか手紙一つも通じない状態で、親や兄弟が生きているかもわからない。日本で住む限りは朝鮮人を名乗ると不都合や不利益があるので、選択肢としてはそれ(日本国籍取得)だった。

その後、プロレスラーとなった力道山は外国人レスラーを次々となぎ倒した。一気に国民的ヒーローとなったが、出自を公にすることはなかった。

徳光和夫が言う。

やっぱり日本人のレスラーがアメリカ人を投げ倒す。自分が朝鮮国籍ということになるとちょっと筋書きが違っちゃうんですよ。プロレスの筋書きが。つまり日本人の男子がアメリカの大男をなぎ倒すという、これが一番の筋書きじゃないですか。

力道山の次男、光男は出身地についてこう聞いている。

俺は小さい時から長崎県大村市、あそこが父の出身地だと思っていたので、一切聞いていないので、「実家へ行ってこい」って言われて、大村へ行ってますから。僕は小さい時から父がそこで生まれたものだとずっと思っていました。息子の僕でさえ、父のことに関してこうだろうなんて想像もできなければ、それは一切僕は父から聞いてないので言えませんという形でいいんじゃないかなと思うんで。否定も肯定も一切しないという立場を取っていますね。

張本勲は力道山の自宅を訪ねたときのことが今も忘れられないという。

祖国の音楽がなかなか(ラジオから)流れてこないんですよ。それをリキさんが自分で探して、僅かに出ている音楽を聴いて踊ったこともありますよ。やっぱり、故郷、生まれた所が懐かしいんだと思って、「リキさん、それなら堂々と祖国はこうだと言わないんですか」と言うと、私は初めて引っぱたかれましたよ。痛かったねえ。「お前の時代は何もないが、我々の時代は差別、区別をされて、虫けらのように扱われたんだ。何がわかるんだ」と言われて、私も胸が痛かったです。世界のプロレスラーがそういう発表ができないんだと。「周りは皆、日本人と思っているから、それで応援してくれるんだ」とおっしゃいましたね。

そんな力道山に転機が訪れる。在日朝鮮人とその家族を北朝鮮に帰国させる事業がはじまったのだ。

リ.スニルが言う。

その頃に力道山の情報が北朝鮮にどんどん流れていくんですね。その段階で当時の金日成(キム・イルソン)も力道山の存在を知っていて、彼に対して評価もしていて。

つづく