【アナザーストーリーズ】戦後最大のヒーロー・力道山 知られざる真実(3)

NHK総合の録画で「アナザーストーリーズ 戦後最大のヒーロー・力道山 知られざる真実」を観ました。

きのうのつづき

シャープ兄弟との世紀の一戦で、力道山とタッグを組み、ともに戦った木村政彦。木村は常に引き立て役を担わされ、次第に力道山との間に亀裂が入るようになった。そして、ついに一対一の真剣勝負を持ちかける。その戦いは昭和の巌流島決戦と名付けられ、大きく報じられた。テレビがスターを生んだ時代、その陰を背負わされた男が見た力道山のもう一つの真実に迫る。

番組の第二の視点は「力道山vs.木村政彦 昭和の巌流島決戦」だ。

試合の流れはいつもまず木村が相手にやられて、力道山が空手チョップで救い出すというもの。木村は自分に見せ場がない展開に嫌気がさしていた。

木村政彦はかつて全日本の大会で三連覇をした柔道家。15年間、一度も負けなしの伝説を打ち立て、鬼の木村と恐れられた男だ。

しかし戦後はGHQによる武道禁止措置のため、闇屋や用心棒で家族を養うしかなかった。そんな木村にとってプロレスの高いギャラは魅力だった。

18年かけて木村の評伝を書いた作家の増田俊也は言う。

柔道界の人たちが敬意をもって尊敬しているだけじゃなくて、国民みんなが知っている柔道家です。途中で木村先生はおかしいんじゃないかと言い出している。「何で俺ばっかり負け役なの?」って。テレビや新聞しかないわけですよ。そこで書かれたこと、映し出されたこと、負け役をやっていたことだけが真実となって積み重なっていくから。思いもしなかった息苦しさ、圧迫。ブルドーザーで潰されるような感覚じゃないですか?

木村はコンビを解消すると、こう挑発した。力道山のプロレスはショウだ。真剣勝負なら負けない。一対一の勝負を求めたのだ。

お前だってプロレスやっているじゃないか。力道山は面白くないから怒りますよね。

木村の挑戦状は力道山の神経を逆撫でするのに十分だった。

プロレスは八百長だ、ショウだといわれているが、プロレスリングのショウと真剣試合は紙一重だ。とにかく挑戦された以上は全力を尽くして木村君と戦うつもりだ。(日刊スポーツ 1954・11・28付)

かくて日本中が注目する中、決戦の火蓋は切られた。

力道山のファンだった作家の村松友視は試合会場の観客席にいた。

もしかしたら、柔道の隠れた必殺技があったらまずいなとか、やばいなとか、力道山贔屓としては思っていましたね。

日本一強い男はどっちだ。会場がヒートアップする中、木村の蹴りが力道山の急所に当たり、空気が一変した。

蹴りが股間に当たったかどうか、狙ったかどうかは全く藪の中ですよ。その時、力道山が顔を真っ赤にして“怒った”という感じがしましたね。だから空手チョップみたいなプロレス技じゃなくて、思わず(相撲の)張り手が出たんじゃないですか。後味は良くなかった。

開始から15分。勝負は呆気なくついた。木村のKO負け。力道山の一方的な勝利となった。

つづく