【アナザーストーリーズ】立花隆vs.田中角栄(6)

NHK―BSプレミアムの録画で「アナザーストーリーズ 立花隆vs.田中角栄」を観ました。

きのうのつづき

10月9日。「文藝春秋」が店頭に並んだ。永田町や霞が関ではたちまち完売。立花の周りには身の危険を案ずる者までいた。しかし、官邸の反応は意外なものだった。

首相秘書官だった小長が言う。

率直な私の印象は新しいニュースはないねと。全部今までどこかで聞いている話をまとめているという感じに受け取りました。その問題で田中(角栄)さんの方から問題提起されて調べてくれという話は一切ありません。慌てていれば、こっちにも伝わるわけですけど、そういう印象はなかったです。特に目新しい話はないという意味で。

記者たちの間で多少の話題にはなったが、ほとんどのマスコミはこの記事に触れることはなかった。

編集部の斎藤禎は言う。

忖度みたいなものがあって、田中番の人も、政治部の人も、(報道するのを)止めておこうというのがあったんじゃないですかね。

同じくチームに参加したノンフィクション作家の塩田潮は言う。

政治部の記者たちは書くほどでもないと思ったから書かなかったと。しかし、記事が出てみると、われわれの手抜かりだと、きちんとやらなければいけなかったと反省をこめて話をした人もいました。

立花隆渾身の仕事は、このまま埋もれるかに見えた。

「田中角栄研究」に日本の大手マスコミがほとんど反応を見せない中、意外なところで火の手が上がった。それは外国特派員協会。田中角栄はここで予期せぬ攻撃を受け、状況は一変する。

「文藝春秋」発売から13日後、外国特派員協会の記者会見。日本の政治権力構造の著書もある、元ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局長のジェイコブ・スレシンジャーは歴史的な会見だったと語る。

1989年に私が初めて日本に来た時に、すでに語り草になっていました。外国人特派員の中で最も有名で、それほど“特派員の力”を見せつけたということです。他国ではこんなことは普通起きません。日本の政治家が外国特派員協会に抱く恐怖みたいなものが田中角栄の退陣後もまだ残っているほどです。

つづく