【アナザーストーリーズ】立花隆vs.田中角栄(2)
NHK―BSプレミアムの録画で「アナザーストーリーズ 立花隆vs.田中角栄」を観ました。
きのうのつづき
スタートは大宅壮一文庫。戦後発行された全ての雑誌を網羅する貴重な図書館だ。メディア関係者なら誰もが聖地と崇める場所だ。今はパソコン検索だが、当時は索引カードで記事を探す。田中角栄のカードは際立って汚れていた。多くの人が探した証だ。ここで関連記事をありったけ入手。そして自治省や地方の役所に赴き、政治資金収支報告書を書き移す。
さらに各地の法務局で関連企業の土地建物の謄本などを全て手に入れる。当時取材班の学生スタッフだった河野修二は毎朝8時半に通い詰めた。
量が普通じゃなかった。新宿区だったら、全部とは言わないけど、何割かは謄本取ったりとか。
土地謄本には、その土地を担保にどこからいくら借りたかも記載されている。
土地取引の履歴が出てくるんですね。土地を転がしているわけですよね。その履歴が出てくるわけです。そこから見えてくる。それは非常に面白かったですね。当たりはずれはありますけど。
後にノンフィクション作家として知られる小木峻一もスタッフの一人だった。立花から渡されたリストには…。
献金企業の名前がずらっと大手から自動車メーカーから銀行から全然知らないところまで献金している企業に直接当たって。しらみ潰しに120社くらい。なんで献金したんだと、何かメリットはあるのかと。土建業界ではいっとう最初に情報をつかめる。競争入札になったとして、談合が多いんです。大方、予定価格というのが漏れてくる。正確なのが漏れてくるらしいです。
予算いくらというのはわかっているから…。(略)上越新幹線なんか計画が決まったときに、もう業者が決まっていたんです。(「田中角栄研究全記録」より)
こんなに具体的に喋ってくれるとは思わなかったですね。さらに、幽霊会社はありましたね。
田中ファミリーと呼ばれる親族や秘書が役員を務める企業、実態を伴わない幽霊企業がいくつも見つかった。
例えば、室町産業。登記されているビルに電話番号を聞いてみる。早速、室町産業に電話してみる。「高梨設計事務所です」「室町産業さんはいますか?」「いらっしゃいません」。今度は新星産業の電話番号を聞いてみる。また同じ番号を案内される。
典型的なパターンですね。本当に名前だけなんですね。登記所で調べると、登記はしてある。資本金もちゃんと入っている。
情報は立花の元へ。しかし…。
斎藤禎は言う。
立花さんのやっていることが全然わからない。登記簿というは設立の日、役員とか資本金とか、それをずっと見ているんですよ。何を見ているのか、分からないんです。立花さんも説明してくれない。立花さんはなにせすぐ表を作っちゃうんですね。原稿の裏ばっかり使ってましたよ。原稿を書き始めたのは20日過ぎですからね。いっぱい矢印とか書くだけで全然わからないんです。立花さんの頭脳を通過して、たぶんこういうことが頭に出てるんじゃないですかね。
河野修二は言う。
分からなかったですね。どういうふうな形に膨らんでいくかは、分からなかったです。
小林峻一は言う。
どういうふうに立花さんが最後に仕上げる書き方にしていくのか。それは分からない。分からなかったんですね。絶えずインプットでしょうね。彼の場合、取材過程では頭の中に入れていくと理解して。ミステリーみたいなものですよ。僕らにとってみたら。
立花は締め切りまで、膨大な情報を睨み続けた。
とにかく面白かったからである。(略)毎日取材の成果が持ち寄られ少しずつパズルが解けていく。(略)謎解きの面白さだった…。(「田中角栄研究全記録」より)
つづく