【玉川太福 芸歴15周年記念独演会 夏】満員御礼!「男はつらいよ」全作浪曲化に挑む節目の会として

国立演芸場で「玉川太福 芸歴15周年記念独演会 夏」を開催しました。(2022・06・09)

太福さんと江戸東京博物館小ホールで「うなる!浪曲人物伝」を3回開いて、江戸博が長期修繕工事のために使えなくなることを含め、相談したところ、「2022年は入門してちょうど15周年になる」ので、思い切って国立演芸場で記念の独演会を開きましょう!ということになった。

太福さんにとっても国立演芸場で独演会を開くのは初めて。演芸会を開く仕事をスタートさせてまだ2年ちょっとの僕にとっても、国立演芸場は当然初めてのことだ。

だが、15周年記念独演会というおめでたい会を成功させたいではないか。太福さんと話し合った。そして、映画監督の山田洋次さんをゲストにお迎えするというオファーに何と、二つ返事で快諾をいただき、何ともスペシャルな記念独演会となった。

今や人気浪曲師である玉川太福先生は、古典も新作も両方に力を入れている実力派であるが、新作に限って言えば、シブラクの創作大賞も受賞した「地べたの二人」シリーズは代名詞のようになっているが、もう一つ大きな柱がある。

それが、国民的映画「男はつらいよ」の全作浪曲化への挑戦である。

「男はつらいよ」の第1作が公開されたのは、昭和44年。それからまもなくして、作家の大西信行先生が玉川桃太郎師匠のためにその浪曲台本を書いた。

それからおよそ半世紀。平成28年に、その音源を持っていた太福さんが、この浪曲をやりたい!と山田洋次監督に「上演許可願い」の手紙を出した。すると、「是非、おやりください」という嬉しい返事が山田監督から届き、口演が実現する。

これが評判を呼び、「第1作だけじゃなくて、他の作品もやらないの?」という周囲の声があり、「男はつらいよ」全作浪曲化挑戦への第一歩となった。山田監督、それに松竹の公認を得て、太福さんは自らの手によって浪曲版「男はつらいよ」のレパートリーを増やし続けている。6月21日には第22作「噂の寅次郎」のネタ卸しが控えている。

この日は、「男はつらいよ」の中でも名作中の名作の呼び声が高い第17作「寅次郎夕焼け小焼け」をうなった。大地喜和子がマドンナの、「唯一、寅さんが振られない」作品でもある。客席には山田監督もいる中、40分近く、熱演した。

義理と人情に厚い寅さんのキャラクターと、太福さんの温かくて優しい人柄がピッタリと重なる。これが、何よりの魅力ではないか。

いつの日か、映画「男はつらいよ」の全作品の浪曲化を達成するのが、とても楽しみである。