【團菊祭五月大歌舞伎 第2部】「土蜘」

歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎 第2部」を観ました。(2022・05・20)

新古演劇十種の内「土蜘」

源頼光の館。病床の頼光を家臣の平井保昌が見舞うところへ、侍女の胡蝶が薬を持参し、頼光の求めに応じて都の紅葉の情景を舞って見せる。

比叡山の僧、智籌が音もなく忽然と現れる。その花道の登場には、実は土蜘の精という不気味さ、異様さを表している。

頼光の病平癒を祈願すると申し出た智籌は、自身の難行苦行の様子を語り、「明王問答」を交わす。しかし、太刀持ちの音若に怪しまれた智籌は頼光の一太刀を浴び、千筋の糸を投げて花道へと引っ込む。二畳台の上で数珠を用いて智籌が見せる「畜生口の見得」は、土蜘の精が本性を顕す工夫だ。頼光を見据えながらの花道引っ込みと共に、この芝居の見どころとなる。

後半、狂言「石神」を素材にした、番卒と巫子との滑稽味溢れた狂言を挟み、やがて豪快な曲調の大薩摩に。土蜘退治を目指す保昌と四天王の登場だ。

そして、古墳に見立てた作り物の中から、本性を顕した土蜘の精が現われ、保昌たちと勇壮な立ち廻りを繰り広げる。

重厚な松羽目物の名作を、菊之助が立派に演じた。

叡山の僧智籌実は土蜘の精:尾上菊之助 侍女胡蝶:中村時蔵 巫子榊:中村梅枝 渡辺源次綱:中村歌昇 坂田主馬之丞公時:中村種之助 碓井靱負之丞貞光:市川男寅 太刀持音若:尾上丑之助 石神実は小姓四郎吉:小川大晴 平井左衛門尉保昌:中村又五郎 源頼光朝臣:尾上菊五郎