【團菊祭五月大歌舞伎 第3部】「弁天娘女男白浪」

歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎 第3部」を観ました。(2022・05・26)

「弁天娘女男白浪」浜松屋見世先の場

尾上右近の好演が光る。楚々とした美しい武家の娘に化けた弁天小僧菊之助。四十八と名乗る若党になった南郷力丸とともに、緋鹿の子の小布をタネに強請りを働く。

が、武士の玉島逸当によって二の腕の刺青を証拠に男と見破られる。この場面はあまりにも有名で、観客誰もが注目して見るところだが、その期待に右近は大いに応えた。

娘から男の正体を明かすまでの運び。「知らざぁ言って聞かせやしょう」からはじまる河竹黙阿弥の七五調の名台詞。台詞廻しの妙、煙管の使い方、音羽屋の芸に倣って、しっかり演じていた。

対する彦三郎演じる逸当は、実は日本駄右衛門という役柄で、押し出しと貫禄を要するが、これもまた良かった。また、巳之助演じる南郷力丸も小気味が良かった。

開き直る菊之助と南郷の傍若無人な様子、花道を引っ込みでの息の合ったやりとりも愉しかった。

続く、稲瀬川勢揃いの場。揃いの小袖を着て「志ら浪」の傘を持った五人男のツラネは聴き応えあり。各役にはめて作られた唄や囃子に乗って、台詞の旋律の美しさと調和して、「動く錦絵」とはよく言ったものである。

早瀬主水娘実は弁天小僧菊之助:尾上右近 若党四十八実は南郷力丸:坂東巳之助 鳶頭清次:中村橋之助 浜松屋倅宗之助:中村福之助 丁稚長松:坂東亀三郎 番頭与九郎:市村橘太郎 玉島逸当実は日本駄右衛門:坂東彦三郎 浜松屋幸兵衛:中村東蔵