【團菊祭五月大歌舞伎 第2部】「暫」

歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎 第2部」を観ました。(2022・05・20)

歌舞伎十八番の内「暫」

舞台は早春の鶴ヶ岡八幡宮。そこに“公家荒”という藍隈をとった清原武衡が周囲を睥睨している。“ウケ”と呼ばれる敵役で、これに従う成田五郎以下、家臣たちは腹出しと称される赤っ面。その他、鯰坊主の鹿島震斎、女鯰の照葉など、色彩美溢れる扮装で、特徴に富んだ役柄が揃う。

一方、石段の下に居並ぶ、加茂次郎義綱や桂の前をはじめとした、武衡に抗う人物は太刀下と呼ばれる。

意に従わぬ義綱たちの首を撥ねるように命じた武衡の言葉に従い、五郎たちが刀を抜こうとするところへ、「暫く」と声を掛けて現れたのは鎌倉権五郎景政。その出立ちは白木綿に鶴菱模様の上着、その上に柿色の大素襖、同じ色の長袴の衣装に大太刀を佩いている。そして、紅の筋隈をとり、前髪の五本車鬢の鬘に魔除けの力を持つという力紙を付けた荒若衆の姿だ。

花道に現れた景政は、荒事特有の台詞術を用いて、“ツラネ”と呼ばれる長台詞を雄弁に語る。さらに、本舞台へ来てからは元禄見得をはじめとした数々の荒事芸を見せ、大太刀を抜いて仕丁の首を刎ねると、その大太刀を担ぎ、六方を踏んで花道を引っ込む。

海老蔵演じる荒事の魅力に溢れた、一幕である。

鎌倉権五郎景政:市川海老蔵 鹿島入道震斎:中村又五郎 那須九郎妹照葉:片岡孝太郎 成田五郎義秀:市川男女蔵 月岡息女桂の前:中村児太郎 加茂三郎義郷:大谷廣松 大江上総介正広:市川男寅 義家家来小金丸行綱:片岡千之助

荏原八郎国連:中村吉之丞 足柄左衛門高宗:市川九團次 埴生五郎助成:片岡市蔵 局常盤木:市川齊入 家老宝木蔵人貞利:市村家橘 東金太郎義成:市川右團次 茶後見:大谷友右衛門 加茂次郎義綱:中村錦之助 清原武衡:市川左團次