「人生はうまくいかない。だから面白い」…スヌーピーが教えてくれたもの(6)

NHK総合の録画で「アナザーストーリーズ スヌーピー最後のメッセージ~連載50年 作者の秘めた思い」を観ました。

きのうのつづき

2000年2月12日。最終回配布を翌日に控えた日。その紙面は印刷された。

1万8千近い作品の中から厳選されたシュルツのお気に入りのエピソード、そしてスヌーピーがシュルツのメッセージを語る。

皆さんへ。幸せなことに、私はチャーリー・ブラウンとその仲間たちを50年もの間、描き続けてきました。子どもの頃の夢が実現したのです。ですが、私は毎日の連載を描き続けることができなくなりました。読者やエディターの皆さん、長い間、本当にありがとう。チャーリー・ブラウン、スヌーピー、ライナス、ルーシー、いつまでも私の心に生きています。

そして、最終回が印刷されるまさにその晩、シュルツは息を引き取った。

最終回とともに亡くなるという偶然すぎる人生の幕切れ。この不思議を証明する証言が2つある。

一人目はアシスタントのペイジ。彼女は機転を利かせ、日曜版を印刷する新聞社から早刷りを入手していた。

実は新聞が配布される前に、印刷のコピーを手に入れていました。シュルツさんに早く見せたいから。彼に見せると、とても喜んでいました。「私は面白いものを描いてきたんだな」。そう言ったんです。

ペイジはシュルツは最終回に満足し、安堵して亡くなったと信じている。

一方、親友のディーンは亡くなった当日も見舞いに行っていたが、シュルツはそうではなかったという。

彼は胸が張り裂けて死んだんだと思う。まさに最後の連載の前日に亡くなったんだ。偶然だなんて信じられるか?誰もが心が折れたくらいでは死なないというけど、彼は自分のキャリアの終わりを悟ったんだと思う。チャーリー・ブラウンが天国に呼ばれたってことさ。

果たして、シュルツはどんな思いでこの世を去ったのか。国境を超え、時代をも超えて、世界中の人々の心を掴んだ「ピーナッツ」。

人生はうまくいかない。踏んだり蹴ったりの日だってある。それでも明日にはシーツから頭を出してまた出かけていこう。シンプルだけど力強い人生の大切な秘密がそこにはあった。

アメリカが威信をかけて臨んだアポロ計画。そのシンボルに「ピーナッツ」が選ばれたのは、何度失敗しても諦めない決意を示したかったからだという。失敗してもめげずに前を向き続ける彼らのように。

シュルツが亡くなって21年。「スヌーピーミュージアム東京」。そのメッセージは国境を超えて伝わり続ける。

強さや正義ばかりが叫ばれる世界で、この力の抜けたキャラクターにホッとするのは、なぜなんだろうか。

「どうしてかな、陽が沈むのを見ていると、いつも悲しくなる」

「クッキーの最後の一つを食べたときみたいにね」。

人生に挫けそうになったとき、僕はスヌーピーを思い出して、頑張ろうと思います。