春風亭百栄「鮑のし」師匠のフラが生きる噺をサゲまでしっかりと。古典も面白いのだ!

スタジオフォーで「もちゃ~ん 春風亭百栄勉強会」を観ました。(2022・05・22)

一席目、「任侠流れの豚次伝 人生鳴門劇場」。6月上席池袋演芸場で、三遊亭白鳥師匠の作品「任侠流れの豚次伝」全10話を日替わり主任が演じる興行がある。その予行演習だ。

ちなみに、①豚次誕生秩父でブー!(弁財亭和泉)②上野掛取り動物園(春風亭一之輔)③流山の決闘(蝶花楼桃花)④雨のベルサイユ(林家きく麿)⑤天王寺代官切り(柳家一琴)⑥男旅牛太郎(入船亭扇辰)⑦悲恋かみなり山(柳家三三)⑧チャボ子絶唱(桃月庵白酒)⑨人生鳴門劇場(春風亭百栄)⑩金毘羅ワンニャン獣の花道(林家彦いち)

確か、3、4年前にも同様の企画があって、百栄師匠は今回と同じ第9話を演じている。だが、「すっかり忘れてしまって、台本もどこかへ失くしてしまって、一から覚え直しました」とのこと。

兎に角、噺が進むにつれて、登場する動物も増えていって、聴くお客様も大変。第9話も、白鳥師匠や三三師匠の高座を聴いたことがあるので、追いつくことができるが、あの「天才的」な荒唐無稽なストーリー展開は必死に食らいつくことが必須だ。そうすると、白鳥師匠の作者としての素晴らしさがわかる。

二席目、「芝居の喧嘩」。

中入りを挟んで、三席目が「鮑のし」。「杖をついている熨斗は何だ?」「鮑のお爺さん」という本来のサゲまできっちりと。普段の寄席では短く切っちゃうから、こういう勉強会でないとできないと、演じ終わった後におっしゃっていたが、聴く客としても貴重な体験で嬉しい。

また、百栄師匠独特のフラが甚兵衛さんのキャラクターとマッチして、良い味わいを醸し出している。寄席の主任興行では、どうしても新作を期待されてしまう百栄師匠だが、こういう噺をトリで演じてほしいと思った。

最後、四席目は「リアクションの家元」。これも「鮑のし」とは違い意味で百栄師匠のフラが生きる新作落語だ。熱湯をかけられたり、サブマシンガンで撃たれたりしたときの表情の作り方は、百栄師匠にしか出来ないだろう。

噺の途中で先日亡くなった上島竜兵さんをさりげなくリスペクトするフレーズを挟み込み、追悼という意味合いをこめたのも、百栄師匠のお人柄が窺えて、嬉しかった。