一龍斎貞奈「木村又蔵 鎧の着逃げ」戦国時代の武士の豪快さ、大胆さをフレッシュに読んだ
上野広小路亭で「講談協会4月定席」を観ました。(2022・04・27)
一龍斎貞奈さんで「木村又蔵 鎧の着逃げ」を聴いた。とてもフレッシュな高座だったし、又蔵の豪快というか、大胆というか、それでいて読み物として滑稽さもあり、良かった。
木村又蔵は貧乏侍だが、かつて加藤清正から恩を受けたことがある。だから、姉川の合戦で恩返しをしたいのだという心意気がいい。だが、鎧も兜も持っていない。家財道具を全て売り払ったが、三貫五百にしかならなかった。
これで何とかしようというのだから、又蔵は大胆だ。大黒屋福兵衛という店に入いる。鎧は60両する。そこで挫けるのが普通だが、堂々としている又蔵はすごい。身体に合うか確かめたいと、鎧を試着しちゃう。
で、ここで悪知恵だ。店主に「一番槍は見たことがあるか?」と問う。「ない」という返事に、「なら、見せてやろう」と、350両入っている風呂敷包みだと言って、店主に預け、又蔵は槍を小脇に抱えて走り出す!
店主たちは喜んで見ていたが、一向に戻って来ない又蔵。風呂敷の中は、たったの三貫五百しかない!着逃げだ!やられた!もはや後の祭り。
又蔵は姉川の合戦で大活躍し、その後、大黒屋に戻って、詫びを入れて莫大な礼をしたそうだ。
こういう豪快な男が戦国時代には活躍したのだなあと思う。面白い読み物だった。