【プロフェッショナル 美容師・髙木琢也】俺は、人生をデザインする(2)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 美容師・髙木琢也」を観ました。(2019年5月14日放送)

きのうのつづき

髙木がいつになくボヤいていた。手にしていたのは雑誌読者が選ぶ人気美容師ランキング。髙木はいつものごとく1位。だが、部下の名前が一つもない。

(スタッフの育ち具合は?)

「ぬるいな」とは思いますよ。貪欲感はない。トップであり続けることも、もちろんいいことだけど、できれば後輩たちにそこの席は奪って欲しいですね。

この日、髙木は一人の従業員を系列店から呼び寄せた。入社4年目、アシスタントを勤める鈴木雄人、24歳。

一番早くデビューするはずが、一番遅くなっちゃったんで、叩き直してやろうと思って。早くデビューしてほしいですね。

髙木の美容室では通常2、3年でスタイリストとしてデビューする。5年目の雄人は同期で唯一デビュー出来ていなかった。努力家で、パーマやカラー、アシスタントの仕事は何でもござれ、カットの技術も申し分ない域に達しつつある。だが、デビューする上で決定的に足りないものがあった。

スタイリストの定義って、「自分はここ、こだわっているんです」というのが、あるかどうか。雄人の場合の一番引っかかる部分は根底にある持っていなきゃいけない“こだわり”がないから。この状態でデビューさせたら、デビューはできるけど、売れない。

こだわり。それは美容師にとって、なくてはならないもの。雄人にどうすれば、こだわりを持たせられるのか。雄人自身、幼い頃から個性がないと言われ続けてきたと言う。誰にも言えずにきた、弱さ。練習中、つい本音がこぼれた。

今まで自分に自信がなかったというか。結構、自分を出さないで生きてきた感じなんですよ。僕って、誰かのマネで生きてきた感じなんです。周りの友達のマネとか、芸能人のマネとか。今になって、それが壁になってきて、難しいですよね。自分が思うことを表現するのって。自分の苦手な部分ですね。

雄人が店に来てから3日後のことだった。髙木が突然、雄人の髪を切ると言い出した。こだわりとは、いかなるものか。自らカットすることで雄人に示す。

本当に「自分の個性を出したい」とか、「自分っぽいて何ですか」ってなったら、それは自分にしか分からないから。自分で気になったことを全部やろうよっていうか。全部半信半疑だと思うんですよ。

「みんながやらないだろうな、こういうこと」っていうところを探して、「これやってもらったら、嬉しいだろうな」とか、「自分だったら、ここが気になる」っていうことを、1個や2個じゃなくて、10個以上、全部やっていく。突き抜けるぐらいやるしか、そんなに簡単に個性って生まれないだろううって、思っちゃいますけどね。

つづく