【プロフェッショナル 美容師・髙木琢也】俺は、人生をデザインする(1)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 美容師・髙木琢也」を観ました。(2019年5月14日放送)

予約は常に2か月待ち。月間最高売り上げ1200万円。日本最大規模のヘアコンテストで3年連続1位。伝説を作り続けるカリスマ美容師・髙木琢也さん33歳に密着したドキュメントだ。彼の信念、「自分を貫く。誰かの人生を変える」に共感を覚えた。(以下、敬称略)

そのハサミは人生を変える。そんな評判を聞きつけ、全国から若者が押し寄せる。月400万を売り上げれば一流とされる中、この男、髙木琢也は破格の月1200万円。

誰が来ても、絶対カッコよくなる。幸せになれる。俺が見ているのはその人の人生。その人を掘り下げて、「新しい世界に出発させてあげる」というのが俺の仕事だから。「美容師をなめるなよ」と言いたい。

人気美容室がしのぎを削る東京原宿。取材初日、ガラの悪いいでたちで現れた髙木は話しかけづらい人そのものだった。だが、素の髙木はすこぶる謙虚。シャイな男だった。

予約は常にいっぱい。今、最も予約が取りづらい美容師といわれる。その人気は予約を受け付けると500の枠が3分で埋まるほどだ。客を前にすると、髙木は突如ビッグマウスに変貌する。尊敬するのは本田圭佑だ。

「デカイこと言おう」みたいなのは思っているんだろうけど、自分がビッグマウスと思ったことはないかも。やっぱ、言わないと結果って残らないみたいな。

華やかに見える髙木の美容室。だが、訪ねてくるのは切実な思いを抱えた若者が少なくない。初めて来たという二十歳の大学生。クセ毛に悩み、店を転々としてきたという。髙木は話に耳を傾けながら、頭の形や毛質、一本一本の生え方を見極めていく。

長さを整えた後、手に取ったのは梳きハサミ。ミリ単位にこだわって、ボリュームを減らし、癖を軽減する。だが、それだけでは並みの美容師。

量減らしながら、動き作っちゃいます。「こっちに曲がってくれ」っていう方向性。きょう良かったというよりも、数カ月良かったと思ってもらえるようにするには根っこの生え方を見とかないと。

髙木の信念は「絶対、才能じゃない」。

いかにお客さん目線に立つかだと思うんですよね。自分がもしお客さんだったら、どうしてほしいか。うまい、へたが出るというのは、ちょっと雑なんだと思う。そういうのは全部フェイク野郎だなと思って。

しかし、髙木が真に求めているのは、外面ではないことが取材を進めていくうちにわかってきた。

京都からやって来た二十歳の専門学校生。一目見て、髙木はあることが気にかかった。目を覆うほど長く伸びた前髪。人から見られたくないというネガティブな感情の現れと考えた。大胆に前髪にハサミを入れ始めた。

顔出せと、「下を向いていても、いいことないよ」っていう。今の若い子たちって、結構いろんなことで悩んでいて、実際見た目に皆コンプレックスを一番持っているから。ただひとつのきっかけが髪型になってもらって、「それって気にしなくていいよ」っていうのを、ちょっと背中を押すだけで、そこで何か掴んでもらえたらいいなって。

美容師のやることって、魔法をかけることかなあ。目の前のお客さんを幸せにするのは当たり前で、俺は最終的に“平和”になったらいいなと思って。世界中が。

世界中をマジでハッピーに。美容師としては大それた夢だと笑われてきた。しかし、髙木は一向にお構いなし。

世の中をハッピーにする、髪で。僕は単純にオリンピックが来たときに、日本って電車満員でサラリーマンの顔がめっちゃ疲れてて、「大変な国だね」って思われるのが嫌だから。「日本っていい国だね」「ハッピーな国だね」って言わせることができたら、俺はそれでいいかな。

この日の予約は20人。髙木は休む間もなく魔法をかけ続けた。

つづく