【二月大歌舞伎 第2部】「義経千本桜」渡海屋・大物浦 仁左衛門の一世一代の芝居に胸熱くなる
歌舞伎座で「二月大歌舞伎 第2部」を観ました。(2022・02・14)
「義経千本桜」渡海屋・大物浦
片岡仁左衛門、一世一代にて相勤め申し候である。大物浦の最後の場面では、満身創痍の知盛の壮絶な立ち廻りと鬼気迫る執念、そして悲壮感を実に見事に演じた。
壇ノ浦の戦いで戦死したはずの平家の武将・平知盛は、銀平と名を替えて船宿を営んでおり、安徳帝と乳母・典侍の局も、銀平の娘と女房に身をやつしている。そこへ兄・源頼朝に追われている義経一行が逗留。知盛は自分の家来の相模五郎らと芝居をうち、義経を油断させて討とうと計画する。白い鎧姿の幽霊になりすまして海上の義経を襲うが、義経はすでに計画を察知していた。
で、大物浦だ。満身創痍の知盛が、安徳帝の行方を尋ねてやってくると、安徳帝を伴った義経が現れる。義経は帝を必ず守護するので安心するようにと諭すのだが、知盛はその言葉に耳を貸さず、義経を討って一門の仇を晴らそうとする。
そこへ武蔵坊弁慶が現れる。知盛の首に数珠を掛けて、出家するように促す。しかし、数珠を引きちぎった知盛は、なおも一門の恨みを晴らそうと、無念の思いを吐露する。
その様子を見守っていた安徳帝は、知盛のこれまでの忠義に感謝した上、義経の情けを仇に思うなと諭す。幼いながらも思慮深い帝の言葉を聞いた典侍の局は、義経に帝を託して自害する。
典侍の局の最期を目の当たりにし、また帝の言葉に心打たれた知盛は、自分がこのような苦難に遭う身の上となったのは、父の平清盛が横暴の限りを尽くした報いであると嘆き悲しむ。
そして、覚悟を決めて義経に帝の守護を頼むと、碇綱を身に巻きつけ、大碇と共に海へと身を投げる。壮絶!
知盛の最期を見届けた義経が、知盛の冥福を祈って弁慶が法螺貝を吹き、その場を去って行く姿に哀愁を感じた。
渡海屋銀平実は新中納言知盛:片岡仁左衛門 源九郎判官義経:中村時蔵 銀平女房お柳実は典侍の局:片岡孝太郎 入江丹三:中村隼人 銀平娘お安実は安徳帝:小川大晴 相模五郎:中村又五郎 武蔵坊弁慶:市川左團次