【二月大歌舞伎 第1部】「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」義を語る次期将軍vs情熱的な浪士

歌舞伎座で「二月大歌舞伎 第1部」を観ました。(2022・02・03)

「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」。

次期将軍と目されている徳川綱豊卿は政治に興味のないふりをしつつ赤穂浪士に心を寄せ、「浅野家の再興と仇討は両立できない」と計りかねている。寵愛する中臈・お喜世の兄で浪士の富森助右衛門は「綱豊の能の催しに敵の吉良上野之介が来る」と知る。

対面し、互いの本心を探り合う綱豊と助右衛門の重厚かつ白熱した台詞の応酬が興味深い。鷹揚な綱豊の風格と、気骨ある助右衛門の人柄の対照という意味で梅玉と松緑の組合せはとても良い。

綱豊の盃を断る助右衛門。綱豊は自分に仕える気はないかと尋ねるが、助右衛門はお喜世が奉公する際に交わした証文上の兄妹の仲を取り消したいと申し出る。すると、綱豊は何か不都合があるのかと尋ねた上で、大石を罵り始める。上野介が実子の上杉綱憲を頼って米沢へ隠退しようとしていると語り、助右衛門たちに仇討の意志があるのかを推量しようとする。

助右衛門は、浪士を束ねる大石が遊興に耽っていては浪士の一味はすでに箍が外れた桶同然と綱豊の追及をかわす。綱豊が大石の放蕩は仇討の本心を隠すためであろうと問い詰めると、助右衛門は綱豊が遊興に耽るのも六代将軍の職を望むからこそ、わざと作り阿呆の真似をしているのではないかと返す。

怒った綱豊に対し、さらに助右衛門は綱豊の放蕩は将軍の猜疑心を避けるための方便で、大石の放埓も同様だが、本当のところはわからないと述べる。

その言葉を聞いた綱豊は、浅野家再興への助力を近衛関白家から依頼されていることを明かし、御家再興がなれば、仇討は出来なくなると教え諭す。

立場の違う二人が火花を散らす台詞劇に息を飲んだ。

徳川綱豊卿:中村梅玉 富森助右衛門:尾上松緑 中臈お喜世:中村莟玉 上臈浦尾:中村歌女之丞 新井勘解由:中村東蔵 御祐筆江島:中村魁春