【プロフェッショナル 雑誌編集長・山岡朝子】思い込みを捨て、“思い”を拾う(2)
NHK総合テレビの録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 雑誌編集長・山岡朝子」を観ました。
きのうのつづき
別の出版社から転職し、編集長を任せられた山岡。判断に迷うたびに、密かに頼りにしている人がいる。
65歳のAさんみたいのが、自分の中にいるんです。
毎月届く3000枚の読者ハガキを読み込むことで、少しずつ読者像を育んできた。
孫が生まれましたとか、最近猫が布団に入ってきてくれなくて寂しいとか、ずっと読み続けていると、その世代の物の考え方とか、どんなことに腹が立つとか、どんなことが嬉しいとか、寂しいとか、どんどん蓄積されていって、いつの間にか自分の中に65歳のA子さんができるんです。
「週3回の〇〇で〇〇できる」という特集を組もうとすると、ちょっと待てよと思って、A子さんに訊くと、「週3回もやらないよ」と。編集長として、A子さんに質問するんです。
A子さんとの対話は誌面作り以外の場でも生かされる。招かれたのは、社内の通販事業部の会議。会社は通販やイベント事業にも力を入れることで、読者の満足度を高めてきた。
山岡がそれまでは別々に動いていた部署の連携を強化。グレイヘアが人気となれば、通販部門とともにグレイヘア用のヘアカラーを開発。スマホ特集に手応えがあれば、イベント部門と講座を開催。業績回復につなげてきた。
この日は雑誌で人気の「終活」についての商品を開発できないかと相談を受けた。65歳のA子さんならどう思うだろうか。
山岡が発言する。
「ハルメク」世代にとっての必要な片づけは何なのか、やったことがあって、それって結局、終活につながると思うんですけど。ケガをしない家を作ることが大切とか。
開発担当者が反応する。
それは、言い換えると、つまづきにくい、段差を作らない、楽な家をどんどん作ろうみたいな。そういう感じで広がるかもしれない。
山岡が加える。
このテーマは、上辺でやらない方がいい。すごく人生の大切な活動だから。
上辺だけの提案に乗るほど、A子さんは甘くない。
A子さんなら、どう思うか。問い続けることで、読者の信頼をつないできた。
つづく