【プロフェッショナル 雑誌編集長・山岡朝子】思い込みを捨て、“思い”を拾う(3)
NHK総合テレビの録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 雑誌編集長・山岡朝子」を観ました。
きのうのつづき
9月。1か月後に発売するファッション特集号の制作が佳境を迎えていた。山岡が検討していたのは、新聞広告。書店で売らない雑誌だけに、新聞広告は読者を増やす最も重要な場となる。
「おしゃれの再出発」。自分の家で出来ることから提案していこうというのが、今回の趣旨ですから。
誌面作りと並行して、広告制作の指揮も自ら執る。
「気分も見た目も一歩前へ」…うーん。「一歩前へ」を「パッと明るく」にしようか。うん、それがいい。
一週間後、山岡の元に雑誌の初稿が届いた。難色を示したのは、着こなし術を紹介するコーナーのタイトル。「素敵な私になる着こなし術」。今回ならではの特集の売りが伝わってこない。
原稿の締め切り。責了日を迎えた。担当者から修正したタイトル案が上がってきた。「姿勢もおなかもスッキリ見せる着こなし術」。だが、これにも納得がいかない。担当者を呼び寄せた。
「何でスッキリ見えるのか」。山岡が注目したのは、着こなし術のポイントが目の錯覚を利用すること。目の錯覚効果を加えたタイトルに出来ないか。だが、副編集長から異論が出た。「いつも服にひと工夫」の工夫を具体的に出したい山岡と意見が分かれた。
山岡が語る。
なにしろ立ち読みできないんだから、信じて買って頂いているんだから。必ず期待を上回らないといけなくて。「面白かった」「役に立った」ぐらいじゃ足りなくて、「すごい」「ビックリした」「感動した」ぐらいまでいかないといけないから。心をこめて最高のベストな状態を見せたい。
新聞広告の制作も大詰めを迎えていた。広告は調査のため、一部の地方紙に限定して、テスト出稿していた。新規で購読を決めた客が、どの見出しに惹かれて決めたのか、一件一件聞き出し、数値化する。反応が悪かったタイトルは修正し、全国版に出す。
山岡は編集長に就任後、マーケティング部を編集部に取り込み、新聞広告を強化してきた。反応が良かった内容はより大きく。「パンツ選びのポイント」という曖昧な表現はやめ、「サイズ選びの新常識」という新たな提案を打ち出す。修正は18か所に及んだ。
山岡は言う。
これで全国の新聞に出稿して、上がればいいんですけど。変わらないとなったら、またやりますから。ベストなものを作った自負があるので。それが伝わっていないんじゃないか、としつこくやります。妥協はないんです。
つづく