柳家三三「雪とん」登場人物それぞれの細やかな描写が粋な笑いを生みだす
イイノホールで「月例三三独演」を観ました。(2022・01・14)
半年ぶりに柳家三三師匠の月例独演会に行った。コロナ前はほぼ毎月通っていた会で、真打昇進前の日暮里サニーホールやお江戸日本橋亭の頃から行っていた愛着のある会。だが、コロナ禍で一昨年から休止が続き、去年には長年在籍していた師匠の後援会「三三時代」が解散となり、会員優先販売もなくなったことから、去年は6月に行ったきり足が遠のいていたのだ。
やっぱり三三師匠のホームグラウンド、一番リラックスして落語を演じているなあということを今回、改めて痛感し、「今年は出来る限り、この月例会に通おう」と思った次第だ。
「時そば」「雪とん」「居残り佐平次」の三席。
「時そば」はやっぱり、冬の噺だなあと極当たり前のことを感じる高座。ただ一文誤魔化す、誤魔化さないの噺じゃなくて、冬の寒さの中、往来でそばを食べる様子の描写が実に素晴らしかった。
「居残り佐平次」の主人公、佐平次の調子の良さのほどがいい。無銭飲食の犯罪だから、後味が悪いと嫌う落語ファンもいるけれど、三三師匠の演じる佐平次の調子の良さが心地よい。「愉快、痛快、女郎屋の二階」と本人が言うセリフのごとく、女郎屋の二階を完全に乗っ取ってしまう話術とヨイショの腕でさぞかし煙に巻かれてしまうのだろう。
中でも一番良かったのは「雪とん」だ。個々の登場人物が目の前に見えるようだ。船宿のおかみさん。その船宿が昔世話になった田舎のお大尽の息子の若旦那。この若旦那は、「お見立て」の杢兵衛大尽のような田舎っぺ丸出しではないけれども、どこか垢抜けない、野暮ったい感じが良く出ている。
その若旦那が恋煩いをしたのが、本町二丁目糸屋の娘。この娘はさぞかし綺麗で、そんじょそこらの男が言い寄っても見向きもしないんだろうなあ、という艶を感じた。その娘についている女中のお清がまた堅固な守りで、鼻息を荒くしている感じが可笑しい。
そして、ひょんなことから美味しい思いをしたのが鳶頭である。背が高くて、色が白くて、鼻筋の通ったいい男。お清も、「こんないい男だったら、どうぞこちらへ」と自ら進んでお嬢様の部屋へ案内することだろう。そして、実際、あんなに選り好みの激しかったお嬢様がコロリといってしまうのだから、いい男というのは本当に得だなあと思う。